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魔皇帝伝説
その他リレー小説 - 戦争

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魔皇帝伝説 29

閃光の刃が触れる寸前、グラウドの身体が消失した。
 
砂塵の舞う世界を、二筋の銀光が交錯した瞬間。
 
――勝負は、決していた。
 
背中合わせで停止する二人。
刀が、音もなく大地に突き刺さる。
そして、刀の柄を掴んでいたゼロスの右手が、傍らに落下した。
肩から先を失った腕からは、鮮血が噴出する。
「……最後だ」
グラウドはゆっくりと向き直りながら、茫然として振り返るゼロスに大剣を振るった。
ゼロスの首は見事に宙に舞い、真紅の体は大地に打ちつけられた。
宙に舞う前にゼロスの目に映ったのは、弧を描く斬撃と、グラウドの鷹のように鋭い瞳だった。
大剣を鞘に収めたグラウドの背後に、長い白髪をなびかせて頭部が落下する。
「紙一重だったな」
首筋に刻まれた傷から流れ落ちる血を掌で押さえながらゼロスの頭部にグラウドは喋りかけた。
「その紙一重の差に、無限の厚みがあるがな…」
なんと、頭部だけとなったゼロスが返事を返したのであった。
「見事だ…後は、我の心臓を破壊すれば我と共に亡者の騎馬は消滅するだろう……」
「……最後に言い残す事はあるか?」
再び鞘から大剣を抜き、ゼロスの胸に剣先をつき立てるとグラウドは溜め息まじりに言った。
「ああ。黒の傭兵よ、この戦に勝利してもエンド国の滅亡を止める事は出来んぞ!いや、この国だけではない各国には既に教皇ハデス様の九人の側近達が暗躍を広げている。彼等は全員『リッチ』と呼ばれる不死の魔術師であり恐ろしい力の持ち主だからな」
ゼロスは、どこか寂しげな表情で最後の会話を始めた。
グラウドは話しを聞きながら周囲の亡者の騎馬がその動きを止めているのを確認する。
どうやら、自分の最後を覚悟うしたゼロスが亡者の騎馬達に命令したらしかった。
「…我は暁島にある『武円』と呼ばれる国で城主に剣術を教え……多くの弟子がいた。そんな我の前に『リッチ』が現れた。教皇ハデス様の支配欲はクロス大陸だけで収まらずに暁島にも手を伸ばしていたのだ…リッチによって弟子達は我の目の前で全員殺され、我は手も足も出ずに見守るしか出来なかった…。そんな我にリッチは囁きかけてきた【力】が欲しいか?と……」
「その【力】が、ヴァンパイア化か?」
「ああ、そうだ……だが、勘違いしないでくれ我はヴァンパイアになった事に後悔はない、その【力】に溺れ剣士としての心を無くしてしまった事を後悔しているのだ。その意味では黒の傭兵よ感謝しているぞ、貴様の剣は狂人となった我の心を一人の剣士に戻してくれたのだからな」
「お前ほどの剣士を狂人に変えるローグス教国とは一体…」
グラウドは困惑した視線をゼロスに向ける。

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