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魔皇帝伝説
その他リレー小説 - 戦争

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魔皇帝伝説 27

次々と亡者の騎馬群を、炎の放流が撫でるように焼きつくしていく。直撃を食らった亡者は原形さえ残さずに蒸発していった。
炎によって地面には長い溝を刻み込まれ、無惨に散り果てた亡者の残骸が折り重なって地面を覆い隠す。
しかし、残骸の向こうには、さらなる亡者の騎馬群が広がっていた―。
 
「…セリア、俺が奴を倒すまで持ち堪えられるか?」
白い額に汗の粒を浮かべるセリアに、グラウドは声をかける。
「お任せ下さい……」
か細い声で、セリアは答えた。
その声を聞くと、グラウドは大剣を肩に担ぎ、無造作とも思える足取りでゼロスに向かって進みはじめた。少しでも早く決着をつけるつもりである。
精霊王を召喚する事が、どれ程の精神や体力を消耗するかグラウドは正確に理解しているのだ…。
 
その時、ゼロスの目が、カッと開いた。
黒い霧で身を包み、抜き身の長刀を手にしている。
「黒の傭兵。我を本気にさせたこと…、後悔するがいい」
ゼロスは厳かな口調で、宣告するように言い放った。
「ご託はいい…。隊を父に任せているんでな、さっさと終わらせてもらう」
次の瞬間――
グラウドの左手が腰に回り、短剣が宙を走った。
ゼロスはわずかに体を動かし、短剣をかわす。
「そんな物で我を倒せるとでも……」
ゼロスを覆う黒い霧は、更に深みを増し、白髪の間からは、鋭い瞳が憎悪を向けてくる。
「…先程より反応が速いな」
「本気にさせた事、あの世で後悔するがいい!」
グラウドの目の前からゼロスの姿が消える。
グラウドはわずかに首を動かし、゛それ゛をかわした。
「……速いな」
グラウドが頬に手をやると、ぬるっとした感触があった。
指先に濡れた赤い液体を舌で舐めると、後ろを振り向く。
後ろには、ゼロスが立っていた。
しかし、その表情には、余裕の笑みはなく、驚愕に歪んでいる。
「……貴様…我の動きが見えたのか?」
「いいや…、感じただけだ」
グラウドは答えると、一瞬に間合いを詰めた。
そして、グラウドは大剣を上段から、ゼロスの頭部に振り下ろす。
激しい金属音が響き、青白い火花が飛び散る。
グラウドが振り下ろした大剣を、ゼロスは頭上で受け止めていた。
「ほう……」
グラウドは、自分の一撃を受け止めた、ゼロスの腕力に感嘆の声をあげると、大剣を両手に持ち、力で押し込む。
「我の剣技、あの世に持って行く土産とするがいい…」
ゼロスは冷やかに言うと、力を受け流すように、刀の反りを利用すると、そのままグラウドの大剣を横に反らして長刀を一閃した。
力を受け流され、体勢を崩したグラウドの無防備な胴に、ゼロスの一撃が迫る。

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