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魔皇帝伝説
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魔皇帝伝説 26

「それがどうした……!」声を震わさずに答える、しかしゼロスは刀を構えたまま身動き一つ出来ない。僅かでも動いた瞬間、胴と頭がお別れすることを熟知していたからだ。
いかにヴァンパイアとは言えども、首を切り落とされればまともに動くことも困難になるからだ。
その硬直の中を、鋭い光が流れた。
グラウドはゼロスの首の皮を僅かに切り裂くと、そのまま後方に跳ぶ。
グラウドが先程までいた地面に馬上槍が突き刺さる。今まで傍観していた亡者の騎馬たちが、主人の危機にいっせいに押し寄せてきたのだ。
四方を亡者に囲まれたグラウドは、大剣を水平に広げ、コマのように回転する。その旋風は、周りを囲んでいた亡者たちを切り刻んでいく。
目の前で亡者たちが次々と破壊される光景を見ながら、ゼロスは自らの肉体を黒い霧で覆っていく。
 
グラウドの振るった残撃が、二体の亡者の頭をまとめて叩き切ると、近くにいた亡者はあらかた片付いた。しかし、すぐに新手の亡者が近づいてこようとしている…。
「セリア!」
グラウドが叫ぶと、いつの間にか後方に控えていたセリアが馬に跨り近づいてくる。
「お任せ下さい。グラウド様」
グラウドの前に進み出るとセリアは、詠唱を奏で始めた。
「―我が血族につらなる契約に基づき我れに答えよ!汝、世界の業火にして火の精霊王!―来たれフレイヤ!世界を焼き尽す炎の魔獣!」
炎の渦が巻く。
ごぉっと炎を巻き上げ、その姿を現した。
岩の肉体に炎の鎧を纏う魔獣、全長10グラドゥス(10メートル)の巨体は空中に浮かんでいる。この魔獣こそ、火の精霊王フレイヤであった。
「滅せよ、フレイヤ!」
セリアが命令すると、フレイヤは口を開き火の精霊力を集めていく。
口内に満ちていく赤い光りが眩しい程の熱量に満ちると、フレイヤが火を噴いた。
強烈な光りの放流が地上を薙ぎ、全面に展開する亡者の騎馬を一瞬にして炎の塊に転じる。
そのあまりの威力に、意思を持たない亡者までが息をのんだ。

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