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魔皇帝伝説
その他リレー小説 - 戦争

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魔皇帝伝説 25

風を切り、矢のような大剣がゼロスを襲う。
間一髪でゼロスはバークスから離れ、大剣を避ける。支えを失ったバークスはその場に倒れ、大剣は地面に突き刺さった。
「くっ……う…!?」 
倒れたバークスは力を振り絞り、剣が飛んできた方に目を向ける。
目の前には、亡者の騎馬隊が埋めつくしていた。
しかし、突然!目の前の亡者の騎馬隊が爆弾を投げ込まれたように爆発する。
そして、砂煙と共に一人の戦士が黒馬に跨り颯爽と現れた。
「…グラ…ゥ…ド」
バークスは力を振り絞り、目の前に現れた戦士の名を呼んだ。
グラウドは馬を、バークスの倒れている辺りまで進めると、馬から降りてバークスを抱き上る。
「…バークス団長」
グラウドはバークスの名を呼びながら彼の死期を悟った。
バークスには、もう声を出す力も残っていなかったが、必死にグラウドに何かを言うように口元を動かす。グラウドは口元を読み取ると、力強く頷いた。
すると、バークスの表情は穏やかになり、目から徐々に光が失われていった。
エンド国の誇り高き猛将は、その生涯を終えたのであった。
バークスの亡骸を丁寧に寝かせるとグラウドは、低く唸り、地面に突き刺さっていた大剣の柄を握り、引き抜いた。
「また一人、友と呼べる男が散ったか……」
ゴオッ、とグラウドの放つ怒気が周囲の空間を揺らした。
「……その男は、貴様の知り合いかな?」
白髪の間から覗く口元を僅かに歪め、にやにやと笑うゼロス。
―漆黒の風が、吹いた。
ゼロスは、突然視界を覆った闇に小さく唸り、長刀の柄を強く握りながら構えをとった。
「な……!」
ゼロスの瞳が、驚愕の光を放つ。
漆黒の風は、烈風となって空間を切り裂いた。
ゼロスが長刀を持ち上げて構えたときには、その目の前に、グラウドが立っていた。
驚愕に固まった青白い顔を見て、グラウドは不敵な笑みをぶつける。
「…貴様…人間か?」
ゼロスの額を、汗が伝い落ちる。人を超えた存在だと、太陽を克服した最強のヴァンパイアだと、不遜なまでの自信を持っていた男の、初めての恐怖だった。
「笑えよ、ゼロス」
グラウドは、悪魔の笑みで囁いた。
「さっきまで楽しそうだったろう?俺みたいな傭兵相手にも、気安く話しかけてくるバークス団長を殺して……。奥さんは料理の上手な優しい人でな、息子のケービスは早く騎士になって、鉄剣騎士団に入団するんだって笑っていたよ」
間合い詰めた瞬間から、グラウドの手にした大剣の刃がゼロスの首筋に突きつけられている。軽く押すだけで、首を切り落とすだろう。

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