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魔皇帝伝説
その他リレー小説 - 戦争

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魔皇帝伝説 24

ヴァンパイアとは、禁術によって人の身から不死の怪物に転生した姿である。
しかし、その姿は呪われた存在以外の何者でもない。確に驚異的な身体能力と強大な魔力を手に入れ、不老不死の生命を得る事は出来る。だが、その全てが他人の生命を…血液を吸い付くす事で得られる力である。その特殊能力は『ブラッドフォース』と言い、一日に二人以上の生き血を吸わないと灰になって死んでしまう事や、太陽の光りに当たると灰になって死んでしまう事から、まさに呪われた存在以外の何者でもなかった。

しかし、バークスを驚愕させたのはゼロスがヴァンパイアであった事ではない。「…き…貴様!何故…太陽の光りに当たって平然としている…」
苦痛に耐えながら疑問を口にするバークス。
「…不思議だろう?これが我等の偉大な教皇ハデス様のお力だ!まぁ…灰にならないかわりに力は半減してしまうが……」
ゼロスはそこで一旦、言葉を止めると。左手を挙げ、細い指にはまった指輪をバークスに見せる。
その指輪には黒い宝玉がはまっており、そこから黒い霧が噴き出していた。
「…教皇様より頂いたこの指輪のおかげで、それも解消されたがな!」
白髪から僅かに覗くゼロスの口元が不気味に笑った。
「……くっ!?」
大量の出血の為、意識を失いそうになるのを懸命に耐えながら、バークスの頭の中には【絶望】の二文字がよぎる。
目の前にいる、この化け物を倒さなければ、エンド国は滅亡する。この戦闘には、国を上げて騎士や兵士を集めて挑んでいる。
つまり、この戦闘に負けると言う事は国の滅亡を意味していた。
そして、目の前の化け物は戦力差を無くしてしまうのだ。味方の数がそのまま敵の戦力になる為、このままでは敗北は目に見えていた。

「……終わりにするか」
ゼロスは呟くと、バークスの目の前に、先程まで持ち上げていたバークスの右腕を投げ捨てる。
「!!?」
投げ捨てられた右腕に一瞬バークスの目線がいく。
「さようなら」
右腕に一瞬、目線がいった僅かな隙に、ゼロスはバークスの真後ろに移動して、バークスの耳元に別れを告げた。
そして、ゼロスはバークスの首筋に牙を沈みこませた……。

「う…あっ……く…」
目は霞み、指一本動かす力さえ無くなっていく…。
首筋から生命力を奪われる感覚にバークスの意識は途切れようとしていた。
霞む視界に写るのは、周りを埋め尽す亡者の騎馬隊の大軍……。
自分の力の無さに、目から涙が流れ出る。
「…ルーズ…し…神よ…」猛将と呼ばれた男の神への祈りだった。

その時―

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