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魔皇帝伝説
その他リレー小説 - 戦争

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魔皇帝伝説 20

「何者でしょうか?」グラウドの馬に自分の馬を寄せながらセリアは聞いた。
「背中の武器は『刀』と呼ばれる剣だ。刀はクロス大陸の南に浮かぶ【暁島】でしか作られていないからな、そこの出身者かもしれんな……」
グラウドは白髪の男を睨むように見ながら呟く。
「刀とは、また珍しいのう……クロス大陸の一般の剣のように強度に重点を置かずに、ただ斬る事だけを考え、鋼を限界まで薄くし、片刃に反りを入れる事で魔法の付与なしに鉄を紙のように切り裂くそうだ」
ウスタルが年長の知識を披露する。
 
「それにしても…中央の兵士達は、なぜあの白髪の男に弓を射るでもいいから攻撃しないんだ!」
まるで庭先でも散歩をする足取りで、中央に配置されたエンド兵に向かって行く、白髪の男を睨み付けながら声を荒げるグラウド。
「何をそんなに焦っておるんだグラウド?」普段冷静なグラウドの焦る姿に、ウスタルは驚きを隠せない。
「分かってるんだ……『回転式連射弩』の影響で、命令系統が混乱している事は…。だが、あの白髪の男が何かをする前に止めないとやばいって、俺の勘が言ってるんだ!」
グラウドは不機嫌そうな口調で答える。
単なる勘だ……。
だが、この勘によってグラウドは幾多の戦場での窮地から生きのびてきたのだ。
しかし、グラウドは傭兵隊の隊長を任されている以上、個人で動く事も…左翼側の敵の牽制の為、隊を動かす事も出来なかった。
その事がグラウドを苛立つかせた。
 
苛立つグラウドを余所に白髪の男は、ローグス兵とエンド兵が対峙する中間辺りで歩みを止めると、背中の長刀を鞘から引き抜いた。その引き抜かれた長刀は奇妙な刀であった。刀身がガラスのように無色透明で…太陽の光の反射がなければ、そこに刃がある事を確認する事も出来ないだろう。
 
「我が名は【ゼロス】貴様達エンド軍を地獄に導く亡者の剣士だ!今、我が力により亡者の騎馬隊を召喚し……地獄を見せよう」
白髪の男【ゼロス】は、エンド軍全兵に不思議な力により直接頭の中に言葉を響かせると、呪文を唱えながら透明の刀身を地面に突き刺した。
 
「…なっ…なん…なんだ!?」
その異様な光景を見たエンド兵は恐怖のあまり言葉が震えた。
透明の刀を地面に突き刺しながら呪文を唱え続けるゼロスの周囲から次々と異形の化物が溢れ出てきたのだ。
次々と、その数を増やしていく異形の怪物。
その姿は、骸骨が鎧を身に付け、左手には円形盾、右手には馬上槍と呼ばれる突き殺す事にのみ特化した槍を装備していた。
更に、『スケルトンナイト』と呼ばれる、その怪物は馬に跨っていた。
当然その馬も普通の馬ではなく、肉は腐り骨や内蔵がはみ出ていた。
その異形の怪物達の姿はまさに『亡者の騎馬隊』と呼ばれるに相応しい姿であった。

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