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魔皇帝伝説
その他リレー小説 - 戦争

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魔皇帝伝説 19

「しかし、周りはひどい状態です。このままでは敵軍の矢が尽きる前に、前衛部隊は壊滅です」
周辺の状況を確認していたセリアが、顔をしかめて話す。
「ああ、だから俺たち傭兵隊は前進して、他の部隊の盾となる」
グラウドの言葉に、セリアは少し目を見開いてから頷いた。
 
グラウドたち傭兵隊は鉄壁部隊を前面にし、まるで周囲の味方を『回転式連射弩』から守るように、移動しながら前進を開始した。
 
 
「戦況はどうなっている」
用兵の魔術王と呼ばれるグスタ王は、傍にひかえる将軍の一人に聞いた。
「はっ!陛下の予想通りほとんどの敵前衛部隊は『回転式連射弩』によって壊滅するでしょう」
「ほとんど…?」
グスタ王が将軍を睨みつけると、それだけで将軍は震え上がった。グスタ王には、その場にいるだけで他を圧倒する存在感があった。金髪の髪に口の周りを覆う髭を生やし青い瞳は鋭い。
王でありながら兜以外の銀色の全身鎧を完全装備している。さらに、その鎧からは強力な魔法のオーラが放っており今にも戦場に赴きそうであった。
「さ…左翼側の敵がしぶといらしく、矢の残量から考えても壊滅は難しいと思われます」将軍は、恐縮しながら話す。
「構わん!予定通り事を進めろ」
グスタ王の言葉を聞いた将軍は、躊躇しながら口を開く。
「恐れながら…!全ての矢を射ち尽くさず、一度中断して敵を油断させて再開してはいかがでしょう」
将軍の策にグスタ王は一言「…愚策!」と言い、問題点を話しだす。
「『回転式連射弩』は確かに強力な武器だ…だが、それはあくまで射間距離の開いた敵に対してだ。もし、射撃を中断して敵兵に間合いを詰められたら『回転式連射弩』は、只の
重い荷物に成り下がる。今は、矢が尽きるまで一人でも多く敵を倒し、混乱させるだけで十分だ……。その後は、ゼロスの奴が決着をつける」
グスタ王は、言葉を終えると勝利を確信しているかのように微笑した。
「出過ぎた事を…申し訳ございませんでした」
将軍は、頭を下げながら改めて目の前の王が何と呼ばれているか思い出す。【用兵の魔術王】と……。
 
 
ローグス軍の、終わりの見えない『回転式連射弩』の激しい攻撃も遂に終わりの時を迎えた。
グラウドは、敵軍の攻撃が止んだのを確認すると、傭兵隊に突撃の指示を出そうとした。
 
「待てグラウド!」
ウスタルは突撃指示を出そうとしたグラウドを止めると、ローグス軍に指を差し示す。
グラウドは、ウスタルの指示す場所に視線を向ける。
視線の先には、ローグス兵が割れて出来た道を当然のように歩く奇妙な男がいた。
背中にかかるほどの長い白髪は顔を覆い、僅かに髪の隙間から口元と片目が覗いている。体は、全体を覆い隠すようにボロボロの真紅のマントを身に付け、背中には、持主の身長程ある長刀を下げていた。

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