PiPi's World 投稿小説

魔皇帝伝説
その他リレー小説 - 戦争

の最初へ
 16
 18
の最後へ

魔皇帝伝説 18

エンド軍本陣に、ダイガ王の、うめくような言葉が響いた。
エンド軍、ローグス軍の決戦は、双方の歩兵部隊が同時に前進し、慣例通りに戦いが起きた。
しかし、その、いつもどうりの展開は最初の一刻程しか続かなかった。
歩兵同士が激しい衝突の火蓋を切って一刻程過ぎた時、突然ローグス側は、先陣の歩兵部隊を一斉に後退させたのだ。
ダイガ王は、すかさず前衛部隊に追撃を命じた。
数で劣勢にあるローグス軍の士気は低い、その為、総力で押せば、戦意を喪失して退却するだろう。
ダイガ王は、自分の予測を疑っていなかった。
しかし、ローグス軍は、退却したわけではなかった。
後退させた歩兵隊の代わりに前面に出てきたのは、特殊な武器を装備した特殊部隊だった。
その特殊な武器は、ローグス教国が独自に開発した『回転式連射弩』と呼ばれる武器で、一瞬に何十もの矢を連続で発射する、恐ろしい武器である。
エンド軍に、ローグス軍の『回転式連射弩』を防御するすべはなかった。
エンド軍の前衛部隊は、隙間なく飛んでくる矢によって一方的に虐殺されていった。
それはもはや戦争ではなかった……。
 
「ひどい戦いだな、これほど一方的になるとは思っていなかった。ダイガ王は、敵国をろくに調べもせずに戦争を始めるとは、とんでもない大馬鹿だな…」ローグス軍の『回転式連射弩』によって虐殺される、エンド軍の状況を見ていたグラウドが、顔をしかめて呟いた。
「ダイガ王の追撃命令に従った前衛部隊と功に焦って前に出過ぎた幾つかの騎士団は、ほぼ壊滅のようです。今残存兵を再集結していますが、三万以上の兵がその命を散らし…さらに増えていくと思います」
セリアが沈痛な面持ちで話す。
「追撃命令を無視した俺たち傭兵隊にも再度、前進命令がくるに違いないな。鉄壁部隊に連絡。前面に進出!」「了解しました!」
傭兵隊の隊長である、グラウドの命令で編成された鉄壁部隊の部隊長ギロムは、グラウドから命令を受け歓喜した。
「よっしゃあー!野郎共、俺たちの見せ場が来たぞ!気を抜くなよ!」
グラウドたち傭兵隊は鉄壁部隊を前面にゆっくりと進み出た。
 
グラウドたち傭兵隊はエンド兵の死骸で辺り一面を覆うなか前進し、第一次防衛ラインに達したとき、ウスタルが叫んだ。
「グラウド!『回転式連射弩』がくるぞ!」
「傭兵隊密集陣形!鉄壁部隊、盾構えー!」グラウドの命令が飛んで、一呼吸しないうちに、一面を覆う矢の雨が襲った。
 
『回転式連射弩』から放たれた無数の矢は、グラウド達の前面に配置された鉄壁部隊の盾に命中した。
彼らの持つ盾は身体全体を隠すぼど大きく、さらに、鉄を幾つも重ねて精錬した強固な盾である。
この盾はグラウドがローグス教国を調査し、その結果『回転式連射弩』に対抗する為に作らせたものであった。 
「傭兵隊の被害は?」「ありません!」
セリアから報告を受けたグラウドは安堵した。

SNSでこの小説を紹介

戦争の他のリレー小説

こちらから小説を探す