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魔皇帝伝説
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魔皇帝伝説 17

エンド王ダイガは、エンド国の圧倒的勝利を信じていた。だからこそ、自ら軍の指揮官として戦場に出たのだ。もっとも、数だけの優位で勝敗がわかるようならば、そもそも戦争など起こさない。
誰もが自分の勝利を信じているからこそ、戦争は終わらないのだ。 
グラウドたち傭兵隊は、敵の左翼側に配置されていた。
「凄い数だな……」
グラウドの口から思わず感嘆の声が漏れる。エンド最強の傭兵と呼ばれ、多くの戦場を駆け抜けたグラウドでさえ約40万にも及ぶ大軍には驚かずにいられなかった。
「我々のような傭兵から見ますと、実に非現実的な光景ですね、これは……」
同じ光景を一緒に見ていたセリアがつぶやいた。
「ですが…これなら今回の戦争は楽勝ぽいっすね!」
「ははっ全くだ!」
周りにいた傭兵達が一斉に笑い合う。
グラウドの顔に不満を感じ取ったセリアは、グラウドに聞いた。
「……面白くない。ですか?」
グラウドはちらっとセリアを見て肩をすくめた。
「まあな、だが、義父さんの引退する戦場としては良いかもな」
「人を年寄り扱いするでないグラウド!」
グラウドの言葉に齢60程の傭兵が答えた。
白狼ウスタル。白色の革鎧を着て、戦場を駆ける姿から『白狼』の異名を持つ彼に、戦争孤児であったグラウドは育てられた。
黒の革鎧を身に纏ったグラウドは『最強の傭兵』と呼ばれる今でも白狼の影のつもりでいる。
そんな彼に、ウスタルはこの戦場を最後に引退すると告げていた。「よいかグラウド!この戦争は楽勝とは限らんぞ……なにせローグス軍の指揮官は『用兵の魔術王グスタ』だからな…」
ウスタルはそこで言葉を切ると、目の前にあるローグス軍を見る。
その時、戦場に大音声が響いた。
「勇敢なる我がエンド軍諸君、我はエンド国王、ダイガである。今、我が国は建国以来最大の戦力をもってローグス軍に戦いを挑まんとしている!この戦いはただの戦いではなく、この国の命運をかけた一戦だ。戦功の著しい者には、むろん褒賞も与えられるだろう。諸君の奮戦に期待する!」
ダイガは、そこでいったん言葉を切った。
魔法の力により全軍に声が響くと、地鳴りのような歓声が波となって周囲に拡散する。
「前進!」
ダイガ王が言うと、進軍開始を知らせるラッパ音が、兵達の待機する平原に響き渡った。
 
 
 
「西方領、常駐騎士隊全滅!」
「東方領、鉄剣騎士団残存兵力皆無!」
「南方軍司令部より撤退の許可を求める早馬が再三届いています!」
「西方領、べーク将軍より連絡!第一次防衛隊はすでに戦闘不能!第二次防衛隊を前進させ防戦するも、敵騎馬隊に効果なし!撤退の許可を出されたし!」エンド軍本陣司令部で、ダイガ王は、次々に飛び込んでくるエンド軍の惨状を伝える報告を聞きながら、呆然と立ち尽くしていた。
「なぜだ。これ程の戦力差があって…なぜ我が軍が押されている………」

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