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魔皇帝伝説
その他リレー小説 - 戦争

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魔皇帝伝説 12

最強の戦士であるのと同時に、希代の用兵家。それがグラウドの本当の姿だ。
グラウドは町に着いて直ぐに、守備隊の隊長マルスに会いに行った。
マルスは二年前まで、グラウドと一緒に傭兵をしていた。
しかし、妻のメイラとの間に子供が出来て、常に死と隣り合わせの傭兵の仕事に悩んでいた。 そんなマルスにグラウドは何も言わずに、エンド騎士への紹介状を渡した。エンド最強の傭兵として名高いグラウドの紹介なら、どの領地でも騎士になれた。
そしてマルスは騎士となり、現在は地方領主グール侯爵の守備隊の隊長をしていた。
 
二年ぶりに再会したグラウドの話しに、マルスは驚愕した。
守備隊長であるマルスでさえ知らないローウェン公爵の幽閉の話に、どこで手に入れたのか、城内の見取り図をだして幽閉場所の特定までした。
そして、グラウドは自分がエンドの覇者になると宣言しのだ。
 
二年前のグラウドは、仲間の為には知略を使うが自分の為には使わなかった。ただ、最強の戦士を目指していたのだ。しかし、今のグラウドは自分の全てを使いエンドの覇者になろうとしている。
その姿も軽装の黒の革鎧から深紅の全身鎧となり、なにより瞳の色が違っていた。
その……赤い瞳に見つめられ、マルスはグラウドに賭けた。
少しでも先を見る目があればエンドの国に未来が無い事は誰もが知っていた。
エンドには、強い支配者が必要だった。
 
そして―
マルスはグラウドの指示どうり城内の八割以上の騎士達を掌握し、制圧に成功した。
今、マルスはグラウドにローウェン公爵の幽閉場所を確保した事を伝える為、部下と共に接見の間にいた。
グラウドの傍らには、いつの間にか千年魔女レインがいる。マルスは、その超越した美しい女性に目を向け、グラウドを変えたのは彼女だろうと思い、感謝した。
騎士になってからの二年間、マルスは愛する妻と息子に囲まれて平和で…幸せだった。
しかし、心の何処かで刺激を…命を賭けた戦いを求めていた。
グラウドから今回の話しをされた時には歓喜に心が奮えたほどだった……。
 
「グラウドの予想どうりの場所にローウェン公爵は幽閉されていたそうだ…」
マルスはグラウドに報告する。
「会わなかったのか?」
「おう。助けだすのはグラウドの役だから」「……了解。…マルス、あとを頼む」
そう言うと、グラウドは軽く手を挙げて出口に向かった。
マルスは部下にグール侯爵を捕えるよう指示をすると、無言でグラウドの背中を見送った。
接見の間に残っていたシイナとジェスとキッドは、部屋の隅で一部始終を見ていた。
三人とも感想はなかった。ただ硬直し、完全に思考停止状態だった。
レインだけは何事も無かったようにグラウドの後を追った。
 
グラウドは地下に続く隠し扉を潜るとエンドの紋章が装飾された分厚い鉄の扉を守る二人の兵士がいた。
「開けてくれ」
グラウドは兵士に言う。
「グラウド様……では、念のため、我々がお供します」
「結構だ!レインも外で待ってくれ」

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