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クロス大陸戦記
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クロス大陸戦記 9

宮廷舞踏会において ゼスティン以外の聖騎士10名は少し異質であった。
ドレスを着て華やかに踊る舞踏会で彼らは鎧を着、腰に長剣をさげているからだ。
もともと、新人聖騎士に祝いを兼ねて宮廷舞踏会を見てもらい、ついでに警備をさせると言う毎年の行事みたいなものであった。
異例なのはむしろゼスティンであった。格好は鎧、腰に長剣と同じであったが彼は貴公子にしか見えなかった。
そんなゼスティンを宮廷婦人たちがうっとりとした目で見ながら聖騎士たちの周りを囲んでいる。
ゼスティンが爽やかな笑顔をむけるだけで宮廷婦人たちは頬を赤らめ歓声をあげた。

・・宴が始まって一段落ついた頃・・・。
大広間の入口の方から歓声があがる。
「何でしょうか?」
ゼスティンが声のほうを振り返る。
そこには、ひとりの女が立っていた。
純白のドレス。優美な肢体。豊満な胸。細い手足。白く透けるような肌。プラチナブロンドの長い髪が輝いている。絶世の美女だ。
「ヴェイス侯爵のご息女、セシリー樣だ」
パイスが、ポツリとつぶやいた。
ゼスティンはパイスを見て、そして思いだした。
「彼女が。光の聖女セシリーなのか」
ゼスティンは彼女のことを知っていた。いや、彼女はゼスティンと同じ年でありながらクロス大陸中にその名を轟かせている。
6才の時に至高神ゼウアの声を聞き、ゼウア神殿に入る。
14才の時には既に最高司祭級の神聖魔法を会得して、さらに戦士の手練もつんでいた。
ゼビア帝国最高の神官戦士。
そして、人々は彼女を光の聖女と呼んだ。

・・・宴では彼女の周りに人垣ができていた。
貴族の息子たちがセシリーをしきりに誘おうとしているが、彼女を守るように立っている二人の司祭が壁のように阻む。
一人はドワーフの神官戦士。もう一人は白髪の老司祭だ。
二人が睨みつけるだけで、貴族の息子たちは逃げていった。
・・・王城ヴェルハラの宴は、夜半を過ぎ。人もだいぶ減ってきたものの、残っている人々は気合い十分である。
ゼスティン達、聖騎士は護衛も兼ている為、宴に残っている。
ゼスティンは、仲間の聖騎士達が不器用に宮廷婦人と踊っているのを横目に、広間に隣接するバルコニーへ行った。
「ふぅ・・・ここは気持ちがいいな」
夜風に銀色の髪をなびかせて呟く、ゼスティン。
「本当ですね」
後ろから、誰かに声をかけられる。

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