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クロス大陸戦記
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クロス大陸戦記 6

模擬試合は、宿舎の外にある広場で行なわれていた。篝火が円形に並べられ、周りには試合を見物しようとする人垣が、もうひとつの円を描いていた。
“カルス”とアスベルが近ずくと、大きな歓声があがり、どうやら試合の決着がついたらしかった。
「副長!」
アスベルに気がついて、近くの男が快哉をあげる。
「もう10人目です。このままだと、副長の記録が抜かれちますぜ」
記録には関心がないのか、アスベルは曖昧に返事をしただけだ。腕組みをして試合の様子を見つめている。
“カルス”も試合を見つめると、10人抜きをした男に別の男が挑戦していた。
10人抜きした男は長い黒髪を舞わせながら巧みに剣を操り相手の男を追い詰めている。「ディオスの奴、これで11人抜きだ」
最後はディオスと呼ばれる男が、相手の剣を自分の剣で絡め取り相手の剣を空中に弾き飛ばした。
「12人目は誰だ!」あちらこちらから、歓声が飛ぶ。
「ディオスの奴やるじゃないか」
アスベルは、人垣を掻き分けて前に出る。
「副長が出るぞ!」
誰かがアスベルを見つけて叫んだ。
「いいや、出るのは俺じゃねぇ」
アスベルは大声で叫ぶと、“カルス”を見る。
“カルス”は、篝火のなかに入るとディオスの前に立つ。
“カルス”は腰の長剣を抜くと、剣を顔の前に持っていきディオスに向ける。
ディオスも倣い剣を向け、“カルス”の剣に軽く当てる。
これは、ゼビアの騎士が一騎討ちをする時の礼儀作法である。
剣を軽く当てるとディオスは後ろに飛び、間合いをあける。
「ディオス、隊長だからって遠慮するな」
「お前の剣技、聖騎士に見せてやれ!」
観客がディオスに声援を送る。
観客の声援など、気にもしないで、ディオスは腰を落し剣の切っ先を“カルス”に向ける構えをとり、鋭い目をさらに細める。
“カルス”は構えらしい構えもとらず剣を下げていたが、次の瞬間“カルス”の全身が瞬間移動したかのように動き、ディオスの目の前に立つのと同時に空中に剣を弾き飛ばしていた。
「勝負あり!」
アスベルが勝敗を宣言する。
見物の騎士たちは驚愕のあまり、声もだせないようで、辺りは静まりかえっていた。

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