PiPi's World 投稿小説

クロス大陸戦記
その他リレー小説 - 戦争

の最初へ
 18
 20
の最後へ

クロス大陸戦記 20

「今、回復魔法をかけます」
セシリーが傍に寄った時には、赤い煙は消えていたが、ゼスティンは苦しそうに呻いている。セシリーは心を落ち着かせ、神への祈りをはじめた。

「そんな・・どうしてなの!!」
あらゆる回復魔法はすべて唱えた。実際、左腕の火傷はきれいに治った。
だが、ゼスティンはあいかわらず苦しんでいる。
「くっくっくっ・・・無駄だ無駄だ!それは術者が自らの命と引きかえに放つ最強の呪いだよ。じきに、全身が毒に侵され死ぬはずだくっくっくっ」
黒いローブの男は、魔将軍が倒されたショックから立ち直ったらしく不気味に笑っている。
「貴様!」
近衛騎士達は、黒いローブの男を取り囲み剣を構える。
「どうやら、宝玉は諦めないといけないようだが・・・魔将軍を一騎討ちで倒すような化物を、この国から削除できただけで良しとさせてもらう。じゃあ、帰らせてもらうよ・・くっくっくっ・・」
そう言うと、黒いローブの男の身体が光に包まれ消えていく。
「逃がさん!」
その声がした瞬間、黒いローブの男を包んでいた光が消え、消えかけていた姿が元に戻る。
「魔術解除の魔法だと・・・」
黒いローブの男は、入口から部屋に入ってくる男を憎悪の目で睨みつけながら呟く。
「来てくれたか、バロ導師・・・」
クーリ皇帝が呼びかける。入口には、宮廷魔術師のバロ以外にパイスたち聖騎士とグリウス、バルド両司祭の姿もあった。
「遅くなりました」
バロは、クーリ皇帝の前に進み恭しく一礼した。
「バロ導師!お願いです、ゼスティンにかけられた呪いを解いてください!!」
セシリーが叫んだ。
「最後の方であったが、我々も魔将軍との戦いは見ていた。だが、その呪いデスポイズンと呼ばれる禁呪は、わたしでも解くことは出来ない。奇跡でも起きないかぎり、その少年を救うすべはない」
セシリーの問いに、答えるバロ。
「ゼスティン!」
パイス達は悲鳴にも似た声をあげ、ゼスティンの傍に集まる。
(私が、ゼスティンを助けなければ・・・)セシリーの心は、そう叫んでいた。
「ゼスティンは、こんな所で死ぬような人ではありません。魔将軍にかけられた呪いは、私が解きます」
セシリーは、決意を込めて言った。
「偉大なる至高神ゼウアよ、我に力を・・」苦しそうに呻くゼスティンを抱きかかえ、セシリーは精神を集中させながら祈りを捧げる。
セシリーは、我が身に神を降臨させるほどの気持ちで、解呪の奇跡を願う。そして、ゼスティンの唇を、セシリーがやわらかな口づけでふさいだ。
セシリー自身は気づいていないが、彼女の全身が純白の光に包まれていた。その光は、徐々にゼスティンの全身も包んでいく。
「わぁ!凄い綺麗」
幼少のアムリス皇子が、無邪気に喜ぶ。

SNSでこの小説を紹介

戦争の他のリレー小説

こちらから小説を探す