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クロス大陸戦記
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クロス大陸戦記 19

「止められたのは久しぶりだ・・・」
ゼスティンが言った。「凄い!」
戦いを見つめていた近衛騎士が、思わず唸る。
ゼスティンは、魔将軍を相手に壮絶な戦いを繰り広げている。
魔将軍は巨大な大薙刀を巧みに振り回し、ゼスティンを叩き切ろうと攻撃を続けている。ゼスティンはその激しい攻撃を、紙一重で残らずかわしてゆく。剣で受け止めようとしない。いや、剣で受け止める事は出来ない、強力な魔力の帯びた大薙刀は鋼の長剣を紙のように切り裂いてしまうだろう。
その時、魔将軍がかっと口を開いた。そこから黒い炎が放たれる。「ゼスティン!」
セシリーが、叫んだ。間一髪でゼスティンはかわすが、僅かに左腕にかする。鎧が炎で溶けてゼスティンの表情が苦悶に歪む。
普通の炎では、聖騎士の鎧を溶かす事は出来ない。おそらく、この黒い炎は冥界の炎だろう。
左腕の火傷に苦しむゼスティンに向かって、魔将軍は最上段から大薙刀を振り下ろす。
その攻撃を、懐に飛び込む事でゼスティンはかわし。さらに、腹部に神速の四連突きを放つ。
青い体液を噴水のように溢れさせながら、魔将軍は後退する。
その後を追おうとしたゼスティンだったが、魔将軍が大薙刀を振り回したので、その動きは止められた。
そして、魔将軍の身体は宙を舞った。
大薙刀を振りながら後退した瞬間、魔将軍は大地を蹴って跳躍したのだ。そして、着地する寸前、魔将軍は大薙刀を上段から振り下ろした。
大薙刀がゼスティンの頭を切り裂いたと思った瞬間、ゼスティンの身体が、踊りの名手のように円を描くような動きを見せて大薙刀をかわす。
大薙刀は、ゼスティンの髪を切り払っただけで足下の大理石の地面を切り裂き、食い込んだ。
「終わりだ」
ゼスティンが言った。形勢は一瞬で逆転していた。
ゼスティンは、魔将軍の後ろを取っている。体勢の崩れた魔将軍は、完全に無防御だ。
ゼスティンは気合いの声をあげ、魔将軍の首を切り落とす。魔将軍の首が飛び、地面に転がる。
ゼスティンは止めとばかりに長剣を振るい、魔将軍の身体を切り刻んでいった。
細切れになった魔将軍が、青い血の海のなかで肉片と化した。
「ば・・馬鹿な・・」黒いローブの男は、目の前で起きた事を信じられずに、驚愕の顔を浮かべた。
「動いているわ!」
セシリーが注意し、ゼスティンもそれに気づいた。
動いているのは、完全に切断され、床に転がっている魔将軍の頭であった。
そして、魔将軍の口から呪文が洩れはじめた瞬間、その口から赤い煙をあふれだし、その煙がゼスティンを襲う。
煙に包まれたゼスティンの表情が苦悶に歪み、片膝を地面に落とす。煙をだした魔将軍の頭は、完全に動きを止めた。
「ゼスティン!」
我慢できずにセシリーが走りだし、苦しんでいるゼスティンの傍に寄った。

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