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クロス大陸戦記
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クロス大陸戦記 17

当直の騎士達が、最後の魔族を倒すのを確認すると、爽やかな笑顔をセシリーに向けながら話す。
「・・・わかりました、そのかわり“ゼスティン”も、わたしを“セシリー”と呼んでください」
頬を赤らめながら答えるセシリーの言葉に、何も言えなくなるゼスティン。
「わっわかりました」セシリーの、無言のプレッシャーに負け承諾するゼスティン。
ゼスティンは当直の騎士達に現在の状況を説明し、皇帝の寝室に向うため通路に戻ろうとする。
(我が主人よ・・遂に我がもと・・に・・)脳に直接響くような声に、ゼスティンは後ろを振り向く。
「どうかされましたかゼスティン?」
急に後ろを向いたゼスティンに話しかけるセシリー。
「いえ、急に頭の中に声が響いたので・・」宝庫の扉を見つめながら答えるゼスティン。「どんな声ですか?」セシリーが聞くと、ゼスティンは不思議な声の事を詳しく説明する。
「それはきっと三神具の声だと思います。ゼスティンは三神具に選ばれたんです」
セシリーが、言った。「その詮索は、後回しです。召喚師との戦いは、まだ終わっておりません」
ゼスティンが言って、皇帝の寝室に向って駆けて行く。
セシリーは、一瞬躊躇してそれに続く。
ゼスティンたちが通路を曲がると、通路一面に騎士たちの死体がいくつも転がっていた。炎で焼かれ消し炭のようになっている騎士もいれば、鋭い牙で噛み砕かれ元の姿も分からぬ肉片と化している騎士もいた。
ゼスティンたちは、深手を負って倒れている騎士を見つけ、近づいていく。
「大丈夫ですか!」
セシリーは回復魔法を唱える。
「ま・・魔術・・師・化・・物・クーリ・・皇帝を・・た・の・む・・・」
セシリーが首を横に振ると同時に騎士の命が尽きた。
「急いだほうが良いみたいですね」
死んだ騎士に冥福を祈るセシリーに、話しかけるゼスティン。
「はい」
セシリーは、素直にうなずいた。そして、二人は皇帝のもとに向かった。

二人が皇帝の寝室に到着すると、多くの騎士の死体が転がっており、その肉塊から滴り落ちる血で、地面が真っ赤に染まっていた。
部屋の奥には、クーリ皇帝と齢10才のアムリス皇子が15名の近衛騎士に守られている。そして、それに対峙するように黒いフードの男と、それに従うように立つ魔族が一体いた。
「そ・・そんな・・・魔将軍!」
セシリーは、一体の魔族を見てつぶやく。
その、魔将軍と呼ばれた魔族はその不気味な姿を晒している。
長身のゼスティンを頭二つ分上回る身長は鎧のような肉体に包まれ、ドラゴンの頭を乗せたような外見だった。額にある一本の長い角が、天に向かって伸びている。その先端は、槍のように鋭く尖っていた。
右腕には、不気味な赤黒い魔法のオーラを帯びた大薙刀を持っている。
「ほう・・・」
黒いローブの男は、興味深く鋭い目をさらに細くしてセシリーを見る。

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