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吹けよ暴風、荒れよ台風
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吹けよ暴風、荒れよ台風 9

 要求仕様には20oの搭載が求められていたものの、審査現場で反対論も出て海軍でも激しい議論が続いた。暴風の審査に当たった者達の中には、九九式二〇粍1号銃の弾道特性の悪さに、「対戦闘機戦も求められる艦上戦闘機には実用性無し」として反対し、実績のある7.7mm多数装備か、12.7oで4丁か6丁にすべきと言う者もいて、先述の通り各種の武装が試された。
 関係者の熱意はすさまじく、大阪航空工業のテストパイロットと海軍のテストパイロットとが、激論の末殴り合う一幕もあったとも言われている。
 熱意のあまりにすったもんだの騒動となったりもしたものの、海軍がアメリカを仮想敵国としており、B-17などの大型機対策も必要とされた事と、零戦よりパワーのある重戦闘機なればこそ大火力化とすべきという意見から、20o4丁装備となり、増加試作機と初期型では機首に補助火力として7.7mm2丁を追加搭載していた。
 暴風は空母での運用が前提なので、零戦などと同じく左右の主脚の間隔を広くできる内側に主脚を畳む設計だった。

この頃、日本国内では大和級超弩級戦館の1番艦“大和”、2番艦“武蔵”が建造中だったが、2隻とも設計を改め、当初の計画より船体の長さを増し、機関出力も増大して、30ノット以上の高速を出せるようにした。
また、3番艦と4番艦は建造中止となり、その代わり、全長300メートル以上、アングルドデッキ、蒸気カタパルトを装備した超大型空母2隻が建造されることになった。

 この2隻には、従来の空母と同じく飛行甲板前部、中央部、後部にエレベーターを埋め込んでいたが、この3基とは別にサイドエレベーターを1基搭載している。
 欧米列強に比べ経済力に劣る日本では、海軍も試作や試験の為だけの艦を建造する事は少なく、いきなり実用艦で新技術を試すことが多かった。隼鷹級航空母艦で試され、大鳳にも採用された傾斜煙突などがそのいい例である。
 事前に別の空母でサイドエレベータ―やカタパルトも試したかったのだが、カタパルトは開発に手間取った事、サイドエレベーターは従来の空母や翔鶴級で試すと、スペースの関係で従来型エレベーターを2基にせざるを得ず、失敗作だった時にその空母の運用性が大きく下がる為、超大型空母での試験となったのだ。

 十三試艦戦に話を戻すと、左右主翼は頑丈な通し桁で一体構造、主脚外側に機銃搭載スペースを設けたが、主翼構造の簡略化は、思わぬ副産物も生んだ。
 途中の生産型からではあるが、主翼を機銃搭載部のすぐ外側で折りたためるように改良され、空母の格納庫内で面積を取りにくくなった。
 この部分は強度と整備性の両立のため、大型のボルト各4本で固定していた。
 また、機体の頑丈さ故に「射撃時の命中率は零戦より良い」という評価もあった。
 他にも生産性と整備性の優先の為、整備や修理で付け外しの多い箇所を中心に、極力ボルトの数を少なくして大型のボルト少数で留める構造を多用した。

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