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吹けよ暴風、荒れよ台風
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吹けよ暴風、荒れよ台風 8

 余談ではあるが、この機体の開発(と上記の激論)によって発艦補助装置としてカタパルト、ロケットブースターなどの開発が促進され、一部は大戦中に実用化されることとなる。
 また、自社の生産力が小さいことを考えて、大阪航空工業では生産効率を重視しており、自ら設計者として起業した身でありながら「110点の機体を造る工数や工員があるなら、100点の機体をその3分の2の工数で造れ」と高橋社長は度々言った。
 また「軍用機は名工の業物ではない。製造しやすく手入れしやすく壊れにくく、工員も簡単に作り慣れる事が出来て、基本的な訓練を受けた兵士なら誰でも普通に使いこなせるような、頑丈で頼りになる武器でなくてはならん」とも言った。
 暴風では、主翼の構造を簡略化するため、主翼内燃料タンクを用いない設計になっていた。
 胴体内に大型タンクを入れ、操縦席直後に配したので操縦席もろとも護るために、タンク直後に防弾板が当初から装備されていた。
 海軍機としては初の試みでもあり、反対論も出された。
 海軍のテストパイロットからは当初、格闘性能が下がるという意見もあったが、高橋社長ら開発陣はこの意見にこう反論した。
 「十二試艦戦は九六式艦戦のような格闘性能を重んじておられるそうですが、私どもの十三試艦戦は、そこまでの格闘性能を追求しないことで、爆装時も十分な速度が出せ、戦闘機としても敵戦闘機も爆撃機も逃がさない快速を出せる、そういう機体に仕上げる事にしたのです。互いを補完し合える機体たらんとしています」 
 この反論に、海軍のテストパイロットの中には納得する者も、操縦者の技量を活かすには格闘性能が大事と譲らない者もいた。
 零戦、暴風の両方の実戦配備後、ベテランには「格闘戦の腕前を目いっぱい活かせる」として零戦を好む者も多くいたが、若手を中心に「零戦より格闘性能は劣るが速度に優れ頑丈で、敵機を逃がさず食いつけて、防弾がされている暴風の方がいい」という者も意外と多くいた。
 特に、審査に当たった海軍パイロットの山岡大尉は暴風に惚れ込み、「十三試艦戦を主力として採用するならば、速度、火力とも他国の戦闘機に遅れなど取らない」とまで言い切った。
 十三試艦戦では、大火力を求めて何種類かの武装がテストされた。機首7.7mm機銃2丁と主翼に7.7o機銃を左右各3丁装備したもの、機首7.7oはそのまま、主翼機銃を20o左右各2丁にしたもの、機首と左右主翼に12.7mm機銃を2丁ずつ6丁装備などであったが、まだ十三試艦戦と呼ばれていたこの頃の九九式二〇粍機銃はまだ短銃身の1号銃で、弾道特性が悪かった。

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