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吹けよ暴風、荒れよ台風
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吹けよ暴風、荒れよ台風 5



 昭和13年、三菱では先に開発してすでに量産化していた空冷複列星型14気筒の「金星」の機構を流用してより大型化した「火星」の開発に着手していた。海軍名称は「十三試へ号」であった。
 逆に金星を小型化したのが「瑞星」であった。
 信頼性の高い「金星」の派生であったためどちらも成功したが、三菱技術陣は先述の通りさらなる野心的な開発案を実行していた。
 すなわち、「火星」を18気筒化したハ42こと「木星」である。
 さらに、中島で「栄」を18気筒化した「誉」の開発計画が進んでいる事を知ると、金星を18気筒化したハ43こと「水星」の開発に挑んだ。
 ハ43こと「水星」、ハ42こと「木星」と共に、もう一つの野心的なエンジンが開発されていた。ハ50、後に「土星」の名で呼ばれることになる大型空冷エンジンである。
 木星と同じく、手堅い設計で信頼性を追求したこの2400馬力エンジンは、火星の発展型であり、水星、木星両エンジンの知見をフィードバックして改良が続けられた。

 当初「MC-40」旅客機用として三菱側の提案で開発されたハ50は、火星をそのまま22気筒にしたようなエンジンであったが、試運転してみると振動が大きく、金星以来のカムとプッシュロッドを前方集中配置による機構の複雑化による不調に悩まされた。
 振動問題は、クランクシャフトの前列と後列の主連棒の位相を火星以来の180度から変更するなどの改良で一応解決し、カムとプッシュロッドを前列と後列で別々にする改設計を行い、これらの問題は一応収束を見た。そして、昭和16年初春から始まった本格的な運転試験では2400馬力を達成した。
 この振動対策や機構の刷新は、火星の後期型やハ42木星、ハ43水星にも反映された。
 陸軍ではハ150として、木星一一型として海軍に採用された初期型は、火星の気筒数を増やし、機構を改善しただけで一気筒当たりの馬力はあえて向上させないなど、堅実な設計にしたことで上手くいったのだ。
 2400馬力という大出力は陸海軍を狂喜させ、早速一式陸上攻撃機などの双発機を中心に、搭載が試みられることになった。
 
 この時点で、「MC-40」旅客機は火星4基搭載で初期型の生産が始まっていた。1940年東京オリンピックに間に合わせるため、暫定的に火星搭載で就航したもので、こちらもまずまずの実績を残した。
 輸送機型や、ハ50土星搭載の爆撃機型の受注にも成功した。

 しかし、戦闘機向けとしては土星は人気が無かった。空冷複列22気筒という設計は必然的に大直径化を招き、機体設計者が空気抵抗対策に頭を抱えたのだ。

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