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吹けよ暴風、荒れよ台風
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吹けよ暴風、荒れよ台風 12

 この時、国家の威信をかけた東京五輪と日本万国博を成功させるため、政府が英断を下した。
 すなわち、当時は日本の工業力や技術の最優良部分を軍が独占していたが、これを大掛かりに民生にも転用し、また各省の担当分野を超えた技術の交流である。
 一例が、鉄道省がドイツの特急気動車「フリーゲンダー・ハンブルガー」に触発され、威信にかけて超特急「八咫烏」用に開発した「キハ2600系」であった。
 軍の命令でライセンス生産されていた1000馬力の液冷ガソリンエンジンをデチューンした550馬力エンジン2基を積んだ動力車を両端に、その間に一等車などを6両から8両入れた特急用電気式気動車であった。
 当時の超特急「燕」を牽いていたC51やC53といった蒸気機関車が1000馬力程であったことを思えば、2倍である。
 固定編成で、しかも煙も出ないとあって、煤煙による汚れを禁せずデザインできたことから、戦後を先取りしたようなスタイリッシュな車両として完成した。
 ベージュの車体に、ウィンドウシルとウィンドウヘッダーを空色に塗ってアクセントにしたデザインは、当時の客車にないもので、ラウンジカーや、発電用エンジンによる冷房装置の装備など、画期的な要素が多く盛り込まれていて、全車が一等車という外国人観光客を強く意識した列車であった。


1番艦“信濃”、2番艦“出雲”、この2隻の超大型空母は将来の艦載機の大型化、高性能化に対応できるよう、様々な新機軸が盛り込まれ、重量20トン以上の艦載機の運用が可能とされた。
この超大型空母の建造と並行し、2,400馬力級エンジン2基による双発の大型艦上攻撃機“雷光”が設計されることとなった。
ソノ性能は、爆弾2.5トン又は800s航空魚雷を3本搭載し、650q/h以上の高速と4,000q以上の航続距離が発揮できるものとされた。
派生型としては、爆弾装備の代わりに燃料搭載量を増して航続距離を延ばした遠距離偵察機型、大口径機関砲を多数搭載し、防空や護衛を目的とした戦闘機型が考案された。
 だが、当然ながらエンジンともども開発の難航が予想され、信濃型航空母艦の完成までに量産体制に入るものとして、従来の機種より長い開発スパンで開発を行うことになり、当初はゆっくりとしたペースで進められていた。
 機体特性を見るための試作機は、三菱MC-40旅客機と同じく仮に火星を搭載して試験していたほどである。


 その陰で、解体されゆく艦を見ながら肩を落とす者がいた。大陸の権益保護の為に建造され、支那事変でも長江遡行で活躍したモニター艦たちの乗組員だ。
 廃艦になった前弩級戦艦などから流用した30p級の主砲を2門装備し、長江沿いに進撃する地上部隊の支援に活躍した艦たちだ。
 その火力は中国陸軍を長江に寄せ付けず、火力支援ばかりか、日本側の水運による兵站を駆逐艦部隊と共同で守り抜くという、地味だが大きな功績を挙げている。

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