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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 87

こうしてロスアラモスの研究所が破壊されたことにより、アメリカ軍のマンハッタン計画は水泡に帰した。
「我、之ヨリ帰還ス。」
シアトル基地はこの無電を受け取ったが、結局藍山の乗組員は帰ってこなかった。彼らは帰還途中、ロサンゼルス上空で対空砲火によって被弾し、ロサンゼルス市内に突入、自爆したのだった。

3月20日、日本軍の「伊18」と「伊20」がマダガスカル近海でイギリス軍輸送船1隻、油槽船2隻を撃沈した。そして3月25日、ドイツ軍はついにイギリス軍を打ち破り、スエズ運河を占領した。この勝利にはドイツ軍の機甲師団と「ドイツ式零戦」、そしてMe262ジェット戦闘機が前線で連携したことが大きい。ただそれだけでなく、推進燃料による飛行爆弾V2がイギリス国民に精神的不安を与え、更に東部戦線に回すはずだった空軍を使って行われた連日の戦略爆撃がイギリス工業に大きな打撃を与えたことも見逃せない。
ドイツ軍のアフリカにおける勝利により、ドイツはイラクから来る送油管の末端を支配下に置くことができた。こうしてそれまでは日本の蘭印から送られる石油に依存していた状況から脱却し、戦争の勝利に大きく近づいた。
4月、ヒトラーはイギリスへの空襲を強化することを決定。北アフリカに振り分けていた航空戦力を殆どイギリスに回した。
イギリスは日独両軍の潜水艦による海上封鎖とドイツ空軍が艦船攻撃することによって物資が不足し、有効な反撃が出来ない状態にあった。
4月3日Ju287(ジェット戦略爆撃機)が量産体勢に入った。これはターボジェットエンジンを4基付けた前進翼の爆撃機である。最高速度は時速は559kmである。史実では試作のみに終わったが、この戦局で新型爆撃機が必要とされ、量産が始まったのだ。
「これさえ順調に行けば我々の勝ちだ。」
ドイツ軍総司令部は終戦の日が近いことを感じ始めた。アメリカ西海岸は日本が制圧し、ヨーロッパは殆ど枢軸国が占領している。米英のどちらかが戦線離脱すれば、もう片方の国が講和に応じる可能性はぐっと高まるであろう。
Ju287の量産が軌道に乗るまでは推進燃料を積んだV2による空襲とUボートによる船団攻撃、日本軍と協同した海上封鎖等でイギリスを苦しめることがドイツ軍の主たる作戦となった。

シュルルルル
ドドーン
「化け物ロケットめ……」
イギリスはV1の迎撃策はとれたが、V2に対する有効な対抗策が無く、市民はいつ現れるとも知らない恐怖に慄くばかりであった。

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