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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 82

1万メートルまであがることが出来た暴風はB29に立ち向かった。
ダダダダダダダダ
ドガガガガガガガ
しかし、B29も多数の機銃を装備していた上、頑丈なつくりの為に簡単には撃墜できなかった。
ドドォーン
ついに戦艦「武蔵」が後部甲板に直撃弾を受け、更に左舷後部に命中魚雷を受けた。
しかし攻撃機の割りに被害は少なかった。その理由は対空砲火能力である。3隻の戦艦が総力を挙げて対空防御を行えばそれほどの損害は出ないのだ。
また、B29とB17は高高度からの爆撃であったことも命中率が低かったことの原因かもしれない。
日本軍艦艇の被害は少なかったが航空機の被害は甚大で、零戦隊はほぼ壊滅、暴風も殆どが被弾していた。B29に体当たりした機も多く、一方的にやられたわけではないが、次の攻撃を防ぎきれる保証は無かった。
戦闘機隊で生き残った者に、山本長官は母艦への帰還を命じた。
暴風隊やごく僅かの零戦の搭乗員たちは涙をのんで帰還進路を取った。

「宇垣君、あの懸念が現実のものとなったな。四式を使おう。」
山本長官の発言に、連合艦隊参謀長から第一戦隊司令官に補された宇垣纏少将が応じた。
「はい。三式弾では対空射撃時には却って照準困難であることがはっきりしました。戦闘機隊には余計な負担をかけることになりました。」
「うむ。残念だ。戦艦、重巡には四式榴弾を用意させたまえ。」
「はっ。各艦、主砲には四式榴弾を準備せよ!」

さて、ここで四式榴弾について説明する必要がある。
元来、海軍では主砲用の榴弾には零式弾を用いていた。
0秒〜55秒の時限信管で対空射撃もでき、榴散弾である三式弾が傘状の危害範囲なのとは異なり、零式弾は上下左右前後、すなわち全周囲に危害を及ぼすことができた。
この零式弾の爆発威力を新開発の森本爆薬の採用で強化して、46cm弾の場合で危害半径を832mとした新型弾が、話に出てきた四式榴弾であった。
零式弾にせよ、四式榴弾にせよ、「周囲すべてを余すところなく破壊する」代物なので榴散弾よりも照準がはるかに容易であり、敵編隊を狙った場合、多少爆発点が外れていても敵機に危害を与えることが可能であり、一部の砲術将校からは「三式弾不要論」も唱えられていたのだ。
それに対する回答こそが四式榴弾であった。
大和以下の各艦は主砲に四式榴弾を装填し、敵機を待ちかまえた。左舷後部に浸水した武蔵も、緊急注水でトリムの調整を終え、敵機を待ちかまえていた。

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