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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 36

川西は独自に二式大艇の陸上機化を進めたが、これに空技廠が案を出した。これが三式重爆撃機「藍山」である。
「おお・・・・・・」
「藍山」の試作第一号機を見た関係者達は驚きの表情でこれを見上げた。
高翼単葉の4発機であるが爆弾搭載量は3トン(魚雷なら3本まで)、機銃は30ミリ4丁と20ミリ12丁、最高時速は500キロを超える(発動機は「誉」二一型。1990馬力)という凄まじい物であった。また、一式陸攻等と違い、防弾が施されており、危険も少なかった。
「これが『暴風』と組めば無敵の編隊ができるな・・・・・・」
「藍山」はB29殲滅戦だけでなく多彩な作戦に使用できる航空機として期待されたのだ。そして「藍山」はすぐさま増産に入った。
「暴風」と「藍山」は優先的に生産ラインが与えられることとなったのだ。
陸軍もこの計画に協力した。当初「深山」を元にするはずだったキ85は「藍山」の開発計画へと変更され、陸軍名称キ85となったのだ。
兵庫県は武庫川に川西の巨大な工場が出現し、大阪航空工業の岸和田工場も復旧のみならず拡張されていた。
中島飛行機など、零戦の生産に協力していた会社のラインは多くが暴風に転用された。
さらに、陸軍も暴風を採用し、陸軍の工廠までが生産に加わった。キ64急降下爆撃機/「二式襲撃機暴風」として、1トン爆弾を抱えての急降下爆撃さえこなす力と20mm機関砲4門の重火力に、対地攻撃力を高く買ったのだ。陸軍仕様の暴風(現場では「キの64」などと呼ばれた)には、急降下爆撃機仕様のほかに、輸入した40mm機関砲をプロペラ同調装置付きで胴体下に1門取り付け、両主翼にロケット弾左右合計20発または250kg爆弾2発を装備した襲撃機仕様も登場した。
そしてキ64暴風は、九九式襲撃機、百式重爆撃機呑龍、九九式双発軽爆撃機など多くの陸軍の地上攻撃任務機を置き換えることになり、急遽大量の転換訓練受講者が現れた。
ここで大阪航空工業の高橋徹社長は、面白い工夫をしている。知人の漫画家に頼んで、イラストを多用し、平易な文章を用いた運用教本を作成したのだ。
このおかげで、陸海軍の航空隊の搭乗員・整備員たちは容易に暴風の整備法を習得できるようになった。

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