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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 24

この時は敵戦闘機の掃討が目的だったので十三試艦戦は爆弾を積んでいなかった。
無線指示を聞いた各機を率いて、山岡少佐機を先頭に十三試艦戦は急上昇してゆく。

ヴォンヴォンヴォン・・
火星エンジンが咆哮し、十三試艦戦はぐいぐいと上昇してゆく。本土での零戦隊との模擬空戦では、アグレッサーとしてF4Fなどの敵機役を引受けていた十三試艦戦である。機体が重いにもかかわらず、上昇力は零戦にさほど遜色ない。零戦でF4Fと闘うときは急上昇して一挙に頭を押さえる戦法も可能なのだが、それはこの十三試艦戦でもできそうだ。

山岡少佐の無線機に部下の音声が飛び込む。
「敵機発見!左舷下方10時方向に約20機!零戦隊に向ってます!」

艦爆出身の3人も連れてきたほうが良かったか?
一瞬そんな考えが頭をよぎる。十三試艦戦隊は零戦から転換した6名、残る3名は九九艦爆からの転換者で構成されている。いずれもベテランだが、戦闘機出身者は急降下爆撃の経験は訓練だけだし、艦爆出身者は空戦の経験は訓練だけだ。だから艦爆出身者は戦闘機のみで編成した第1次攻撃隊ではなく第2次攻撃隊に割り振ったのだが・・。だがともかく今は目の前の空戦だ。

 
「ここからなら真上から一撃できる!一撃して敵下方に出たら再度急上昇して一撃する!奴らの編隊を分解させるんだ!続け!!」
山岡少佐の号令とともに、十三試艦戦6機は急降下を開始した。艦爆と艦戦の統合を目指しただけあって、零戦のような急降下速度制限はない。頑丈な機体とエンジンパワーに物言わせて、猛然と敵空母が放ったF4F隊へと突入してゆく。
ドガガガガガガガガガ
一斉に20mm機銃が火を噴く。
ボウン
完全に不意を付かれたF4Fはあっという間に火を噴き海面に叩きつけられた。更に別の機は空中で木っ端微塵となった。
「良いぞ!もう一息だ。」
十三試艦戦は機銃を撃ちまくりながらアメリカ艦載機の編隊へ向かって急降下した。
「20ミリ機銃は零戦では弾道が悪いと不評だったが、さすがは長銃身型4丁を並べると違うな。」
山岡少佐はつぶやいた。
撃たれた敵機の多くは一挙に撃砕され、十三試艦戦隊が駆け抜けた後には、F4Fが6機墜落してゆく。
そのまま今度は急上昇に転じ、半ダースもの味方を失って編隊がばらばらになったF4F隊めがけ、突進する。

「なんだ今の奴は?!」
「ジークじゃないぞ!ジャップの新型?!」
米軍機の無線では狼狽するパイロットたちの声が交錯していた。

分散したF4Fは混乱している。

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