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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 163

米軍の空挺兵たちは降下地点をロンメル達に読まれ、現地では至る所で故意に川などの水を流し込んで沼地にされていた。
そのままろくに動きが取れないまま、各地に配された歩兵部隊などに掃討された。
だが、上陸を諦めるつもりはない米軍は戦艦に、無謀ともとれる接近砲撃を命じた。
砲撃目標は、ロケット砲部隊だ。
対空火器の増設で減らされた、昔ながらのケースメート式副砲が、沿岸砲台に反撃する。
両用砲は仰角を上げてV1へと射弾を送り込み、対空機銃もそれに続く。
フロッグマンを送り込んだり準備砲爆撃で事前に機雷などはかなり除去していたといえ、海岸砲台に対しては戦艦ではなく戦車の戦闘距離にまで接近している。
だが戦艦の艦長たちは、伝えられた地上部隊の苦境にもはや触雷や座礁の危険を顧みない。
戦闘機隊や危険をおして観測を続ける偵察機の報告をもとに、ロケット砲部隊の位置を掴むと砲撃命令を下す。

「艦長より砲術!とにかくロケット砲に撃ちまくれ!誰彼構わず挽肉にするあのいまいましいクラウツども、ロケットもろともあいつらを挽肉にしてやれ!!」
「了解!座標さえわかれば奴らなど!ファイア!」

14インチ主砲が仰角を取り、轟然と発射炎、それに砲声を挙げる。


ライノセラスやネーベルヴェルファーを撃っていた砲兵部隊も、打ち続く射撃音の中その音を聞いた。
大口径砲弾が飛来する、独特の禍々しい轟音を。そして、発射陣地のあちこちで爆発が生じ、近くにいた車両を叩き壊し、断片で将兵を切り刻む。

「いかん!各車退避!」
「乗車しろ!急げ!」
「間に合わんなら伏せろ!」

横転する車両や、近くの弾薬の誘爆に巻き込まれる者もいるが、残る車両は素早く後退する。
砲兵部隊指揮官が、退避命令を出して自分も指揮車両に乗り込むと、額に冷や汗を一筋ながして呻くように言った。

「畜生、これは艦砲射撃だ。奴ら、無理矢理に戦艦を接近させたらしいな」

ロケット砲部隊では戦艦に反撃することはできない。無駄に犠牲を増やすだけだからだ。
悔しがりながら後退していく。
増援を命じられて急行した装甲師団は、沿岸要塞への到着直前、眼前の砲撃陣地で大口径砲弾が次々に炸裂し、ロケット砲部隊が痛めつけられるさまを目撃していた。

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