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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 162

ボフォース40o機関砲が、それまで沿岸陣地や砲座と撃ち合っていた5インチ両用砲が、次々に仰角を上げ、空にめがけて次々に撃ち上げられる。
空のいたるところに爆煙が生じ、曳光弾の光が幾条も伸びあがっていく。
飛行速度では通常の攻撃機程度でしかないV1は、この迎撃で何発も撃墜される。
V1は舟艇の転覆も狙い、海岸一帯を狙って放たれていた。
近接砲撃していた駆逐艦などからすれば、無視することもできず彼らの砲火の多くを引き付ける結果になり、撃墜されたV1も結果的に海岸要塞の支援の役には立っていた。
当然、生き残っていた砲台は勢いづく。艦砲による圧迫が弱まったのを好機と、仕返しとばかりに駆逐艦を撃つ砲もあれば、上陸部隊への砲撃に切り替える砲もあった。
だが、目標変更を余儀なくされた駆逐艦部隊をあざ笑うかのような光景が出現する。

「敵防壁後方に大量の白煙!」
「ちぃぃ…ロケット弾か!」
「敵ロケット弾多数、味方地上部隊に着弾!!」

地上部隊が吹き飛ばされるさまを見せられた、駆逐艦乗員達が歯噛みして悔しがる。
ここでもネーベル・ヴェルファーや、ライノセラスの名で再生産されたカチューシャ・ロケットが驟雨のように海岸に降り注ぐ。増援として送り込まれてきた砲兵部隊のうち、装輪車両に搭載されたロケットランチャーは戦車部隊より早く駆け付ける事が出来た。

「マジかよ!ここまできて!!」
「とにかく伏せろ!そして黙ってろ!」


ロケット弾多数の攻撃に、伏せながら思わず叫ぶ若い兵士にベテランの下士官が怒鳴る。
うっかり喋っていて、砂が大量に口に飛び込む事もあるからだ。
その若い兵士は、硝煙にくすんだ顔を蒼白にして黙り込んだ。
連合軍兵がV1やネーベルヴェルファーに吹き飛ばされ、沿岸要塞のドイツ兵達が快哉を叫ぶ。


「海岸要塞各地から報告!V1多数の飛来により敵上陸部隊及び支援部隊は混乱、舟艇多数が転覆し、敵駆逐艦は地上砲撃から対空戦闘に転じています!」
「ロケット砲部隊の増援が前線に到着しました!攻撃を開始しています!」
「よし!!」

総統大本営で指揮に当たっていた将軍や参謀達が喜びに沸く。
陸戦の総指揮を執る、西方総軍司令官のエルヴィン・ロンメル元帥が言った。

「装甲師団は後どれだけで海岸に着く?空挺部隊の掃討状況は?」
「はっ!カーン近郊に降下した敵空挺兵は、大半を掃討したとの報告が上がっております」
「各装甲師団は、妨害されなければあと30分で到着する模様です」
「警戒を怠らず進撃せよと伝えてくれ」
「はっ!」

ロンメルは満足そうに頷き、命じる。

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