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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 161


「地上部隊と舟艇部隊が窮地に陥っている!可能なら戦闘機隊はV1を攻撃せよ!」
「こちらランサー、クラウツどもが次から次へとやってきてV1を叩いてられない!」
「そんなこと言われても敵機とやりあうのに手一杯だ!ぐわあっ!!」
「四の五の言ってないで、何とかするんだ!ようやく壁を少し割ったんだぞ!」
「だったらもっと戦闘機を寄こしてくれ!海軍の奴らでも構わん!」
「今向かわせている!」

必死に地上部隊を助けさせようと指示を出す管制官と、敵戦闘機との潰し合いでそれどころではない戦闘機隊の怒鳴りあいめいた通信が交錯する。当の管制官も、相手が拒否返答の最中に被弾する音や、そのまま通信途絶する状況にも遭遇した。
そして、迎撃をすり抜け、独特の不気味な爆音とともに飛来したV1は、海岸地帯上空に至るとふっとエンジンが停止する。
そのまま砂浜や浅瀬に着弾し、辺りにある物を自然物も人工物も、有機物も無機物も関係なく砕いては、近くにある魂を人であれ動物であれ現世から放逐する。1両のシャーマンが直撃され、随伴歩兵もろとも爆砕される。V2と違い運動エネルギーが少ないため、地中にめり込まず爆発するV1は、歩兵や車両にとっては殺傷力が高く危険だった。
兵員をいままさに降ろそうとしていた船艇たちの間に着水したV1が、水中爆発で船艇たちを転覆させ、兵員達も爆圧と破片で死傷させる。
別の一発が、兵員を舟艇に下ろしていた軍隊輸送艦を直撃した。盛大な爆炎を上げて輸送艦が炎上し、舟艇に乗り移ろうとしていた将兵が断片に引き裂かれたり、装備ごと海に放り落とされてそのまま浮かび上がれず水死する。

「レーダーに新たな反応!爆撃機にしては遅いです!」
「内陸上空にV1!」
「またあいつか!」

管制官と戦闘機隊の怒鳴りあう少し前、レーダーマンや見張り員の報告が、各艦の艦長に上げられた。
これを聞いた艦橋要員の一人が苛立って毒づく。イギリス南部の港でも作戦準備の妨害に連日飛来し、各艦は対空戦闘に追われたのだ。
危険な距離まで海岸に近づいて艦砲で支援していた駆逐艦達は、それでも上陸支援射撃を続けていた。
だがアレン・M・サムナー級駆逐艦の一隻がV1の至近弾が爆発し大破するに及び、陸砲と撃ち合うのも難しくなった。
自身と上陸部隊を守るために、対空戦闘を優先させる駆逐隊司令や艦長も現れる。

「艦長、ヤバいですよ!このままじゃ飛行爆弾にやられてしまいます!目標変更の許可を!」
「畜生、砲術長!砲撃目標変更だ!上空の敵飛行爆弾を撃て!」

多くの艦で砲術長が異口同音に目標変更を具申したり、言われる前に艦長が対空戦闘を命じたりした。

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