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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 160

だが命中したものは地表や船上で爆発しては周囲を爆風で薙ぎ払い、大きな被害を与えていた。
港内に着弾して、待機中の上陸戦艦艇を転覆させた物もあった。
あちこちの港が艦船だらけに、港も物資だらけになっており、命中率の低さがあまり問題にならなかったのだ。
同じことが、このノルマンディーの海岸でも再現されつつある、そう気づいた米軍戦闘機は何とかV1を攻撃しようとする。
イギリス上空で迎撃していた時は、V1の飛行速度が戦闘機ほど速くない事を利用し、戦闘機の翼端をV1の翼端にうまくぶつけてバランスを崩させて墜落させる手法も使われた。
それは射撃で撃墜しても、爆発で戦闘機の方が巻き込まれて墜ちる事も一度ならずあったからで、それで戦闘機が堕ちたりパイロットが爆死しては、彼らもたまったものでは無い。
V1を1発製造発射するコストより、戦闘機1機の生産コストやパイロット育成のコストの方がはるかに高くつき、割に合わないという事情もある。
この方法でイギリス沖の海上に墜落させられたV1も多かったが、本土上空まで到達したV1は墜落させても、どこかを吹き飛ばしてしまう問題もあった。単に森などを吹き飛ばしただけならまだしも、近郊の家屋や農地などが爆砕される事もあった。
しかしノルマンディ上空はドイツ戦闘機も多く、速度を落としてうまく翼端をぶつけている間にドイツ戦闘機に襲われるし、うまくぶつけても味方の上陸戦艦艇や地上部隊にV1が墜落する危険もあり、戦闘機隊は自分の危険を承知で射撃するしかないのだった。

「バズボムに一連射叩き込んだら、すぐ反転しろ!爆発に巻き込まれないためにはそれしかない!行くぞ!!」
「畜生!ハリーが爆発に巻き込まれた!」
「気を付けろ!上からくるぞ!メッサーだ!」

彼らは必死に射撃する。1機、また1機とV1がP51やP47の射撃で墜落する。
高度3000mほどを飛んでいるV1に攻撃する米軍戦闘機に、独空軍戦闘機はしつこく追いすがる。
上から覆いかぶさるように襲い掛かる一隊もあるし、それをさらに連合軍戦闘機が追いかけたり、完全な混戦状態となっていた。
米軍の管制官や司令部も、管制しきれなくなりつつあった。
V1を攻撃しようとしたP51がMe109に撃墜されたり、眼前の独空軍戦闘機とやりあうのに忙しく、管制官に指示されても、V1への迎撃に参加できない米軍戦闘機も多かった。

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