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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 158

それでもなんとか突破口を切り拓こうと、損害を顧みない猛襲を続けていた。
離岸不能になった舟艇が、後続の舟艇を妨げてしまい、そこにも重砲弾が飛来したりFw190などが爆撃を食らわす。
アメリカの戦艦は、空戦を続ける戦闘機隊の断片的な通報を元に背後の砲陣地やロケット砲陣地へ、反撃を試みていた。
上空では米独の戦闘機多数が、相変わらず壮絶な潰し合いを演じていて、その下をすり抜けたヤーボが陣地などを攻撃し、逆にドイツ軍機も軍隊輸送艦などを狙って急襲したり、戦車にロケット弾を打ち込んだりする。
駆逐艦達も海岸砲台と叩き合い、砲台のいくらかは沈黙させるが、撃破される駆逐艦も続出した。
駆逐艦は米軍では「ティン缶(ブリキ缶)」と渾名される。実際、装甲は無いに等しく、重戦車を撃破できる対戦車砲か、15センチ榴弾砲などの重火砲で撃たれれば手痛い目に遭う。
何かが撃破されるたび、将兵の何人かが抹殺され、死にきれなかった者が悲鳴を上げて苦しむ。
壁の爆破口への砲撃が激しくなった。米戦艦部隊のうち、さしたる損傷を受けずに残っていた「アイダホ」「ミシシッピー」の14インチ主砲による射撃も加わったのだ。
連合軍将兵は、この支援に俄然勢いづいた。

そしてドイツ側。各砲台や火点など、防衛部隊を指揮している守備司令官も強い口調で参謀に問う。

「戦艦の砲撃まで加わったか!味方の装甲師団はまだ来ないのか!」
「あと30分ほどで到着するはずです!」
「それまで何としても粘り抜け!可能な限りの支援を要請するんだ!」
「はっ!」

両軍の兵士達は、本当に死力を尽くして激闘を重ねていた。
後方から海岸の連合軍に制圧射撃を続けるライノセラス−占領下のロシアで再生産させたカチューシャにドイツ軍で与えた名称だ−の一団めがけ、必死でドイツ空軍の防空網をかいくぐって襲撃を試みるP47やB26がいる。
軍隊輸送艦を狙って敵兵を大隊単位で沈めようと、アメリカ艦隊の苛烈な対空砲火の中へ飛び込むJu388やAr234もいた。そして撃墜される者も、爆砕される者も双方少なからず出ていた。
肝心の地上では、ドイツ軍を震撼させるある物が出現していた。

「畜生!あのデカブツは何だ?ヤンキーが大型の戦車を持っていているぞ!」
「88でもこの距離じゃ弾かれる!引き付けてから撃て!」

とにもかくにも揚陸できた戦車が、爆破口目指して進んでくる。M4シャーマンだけではない。数は少なかったが、M26パーシング重戦車も姿を見せていた。

総統大本営でも、この状況は報告が上がっていた。

「新型戦車だと?米軍新型重戦車の情報は本当だったか。各部隊に知らせろ!」

陸軍の士官達があちこちの部隊に連絡を取り始めた。

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