太平洋の荒波 157
ドイツ兵達も、手榴弾を投げ込んだり、機関銃で掃射したり、必死に阻止を図る。
「おいアーチー!」
「だめだ!死んじまってる!さっさと次の爆薬を持ってこい!」
爆薬を一つ据え付ける間に少なくとも一人は死んでいく、凄惨な状況でジョン達工兵はこの地獄のような時が永遠に続くような思いをして、それでも挫けずに作業を続ける。
多数の戦死者を出しながらも、ジョン達はユタ海岸の壁の一部に爆薬を仕掛けた。
「みんな伏せろ!」
バガアアン!
コンクリートが砕け、砂煙が激しく舞い上がる。
「やったか!!」
「少し穴をあけてやりましたぜ」
「畜生、思ったほど大きくは破れなかった…がっ!」
直後、彼らを別の火点からの機銃掃射が縫い留める。指揮官が胸を撃ち抜かれ、倒れる。
「隊長!」
「行け!アーネスト!今からお前が指揮官…だ」
「はっ!」
この爆破を見たシャーマン戦車や、他の将兵の攻撃がここに集中する。
「防壁に少し穴をあけました!現在攻撃中!!至急増援と支援砲撃を願います!!」
「了解!艦砲射撃で支援する!詳細な座標を知らせよ!」
「座標2-8-6に爆破穴を開けた!クラウツどもの戦車が来る前に完全に叩き割ってくれ!」
砲撃支援命令を受け、爆破箇所の座標を知らされて最初に駆け付けたのは、ボルティモア型重巡洋艦で編成された第7巡洋艦戦隊だった。
8インチ砲弾が爆破口目がけて叩き込まれる。
「防壁に破口が発生しました!敵艦の艦砲射撃が集中しています!至急来援願います!!」
「了解!第10装甲軍を至急送る!」
連合軍の攻撃が、ここぞとばかりにユタ海岸に集中する。
眼前に迫る、何両もの連合軍戦車や舟艇を撃破してきたパンター戦車の砲塔を埋め込んだ対戦車火点。その一つを駆逐艦が砲撃で爆砕する。
15センチ砲台が駆逐艦を黙らせようと砲撃を続け、危険なまでに接近して支援する米駆逐艦を炎上させる。
相変わらず砂浜にはライノセラスことカチューシャ・ロケットや重砲弾が振り続けているし、砲弾穴に隠れてもそこにさえ次の砲弾が命中して8の字のようなクレーターを作り連合軍兵士を肉片に変える。