PiPi's World 投稿小説

太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

の最初へ
 154
 156
の最後へ

太平洋の荒波 156


ノルマンディはまさに地獄と化していた。
どの海岸も、防御陣地や重砲による凄まじい火網に、連合軍将兵は死屍累々となりつつあり、アイゼンハワーら司令官たちは、艦砲射撃による支援や航空攻撃で必死に反撃させていたが、どれか上陸海岸を一つに絞って予備兵力を集中的に上陸させた方が良いのではないかと、議論を始めていた。



ユタ海岸では苛烈な反撃下で生き残っていた連隊長の一人が、部下の工兵に怒鳴っていた。

「ジョン、何とかあのクソッタレな壁に穴をあける!あそこに墜落した機体があるだろう!あれに隠れて爆破するんだ!」

砲弾穴の中で彼が示した先には、偶然にも敵機と味方機が1機ずつ墜落しており、敵火点の視界をやや遮っていた。
それでも彼らの近くで迫撃砲弾などが炸裂し、互いの声が聞き取れなくなる事もあった。

「了解!左の火点は抑えてください!」
「わかった!グリフィス達は左の火点を攻撃しろ!その間にジョン達が爆破する!があっ!」
「連隊長!」
「単なる弾片だ!」

指示を出した連隊長のヘルメットを、カイーン!という音と共に弾片が叩き、衝撃で気絶しそうになる。伏せている将兵の上を、間断なく銃火が飛び、少しでも攻撃しようとした連合軍兵士が情け容赦なく射殺される。
兵士達にとっては、一秒ごとに味方が一人は死んでるんじゃないかと思うほど凄まじい銃火が飛び交う中、あちこちに死体や残骸が転がるユタ海岸で、米兵達はなんとか「大西洋の壁」をこじ開けようと苦闘していた。
残骸や砲弾穴に身を隠しながら、歩兵や工兵が犠牲を出しつつも何とか接近しようとする。
部隊長が呼び寄せた、何とか生き残っていたなけなしのシャーマン戦車も支援に加わり、敵の砲火に反撃していく。

「ベイツがやられた!」
「畜生、右30度の88(エイティーエイト)をやれ!」

シャーマン戦車が一両、敵の対戦車砲に撃破された。残った車両がそちらに反撃を試みる。
戦車と対戦車砲が撃ち合う間にも、撃墜されたP-47が一機、戦車部隊の近くに堕ちて爆発した。
その間に、ジョン達工兵の一団は被撃墜機の残骸に隠れて接近し、爆破機材を必死に壁の下に据え付ける。

SNSでこの小説を紹介

戦争の他のリレー小説

こちらから小説を探す