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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 155

ヒトラーの問いにシュペーアが頷くと、カナリス提督も発言した。

「北アフリカの米軍がプロエシュチへの大規模爆撃を再度計画しているという情報もあります」
「石炭液化プラントは順調に稼働していますが、軍需省としましては、ブロエシュチを破壊された場合、人造石油だけでは十分供給しきれないとの試算が出ております」
「これが成功した場合、彼らも容易に停戦しないかと思われます。何とか阻止していただくお願いいたします」

この問題の重大さをシュペーアが説き、リッベントロップも同調し、対策を求めてきた。
出席者達の元には、カナリス提督率いるアプヴェーアからの報告書と、シェレンベルク率いる国家保安本部第Y局からの報告書が開かれていた。
両者共に、シュペーアが懸念した油田爆撃の兆候を捉えていた。
それらによると、早ければ一か月以内に作戦を発動すると考えられた。
プロエシュチは、当時の枢軸国の燃料需要を多くを賄う大油田だった。
それだけに厳重に防衛され、連合軍も二度にわたり300機以上による爆撃作戦を実行した。
米軍によるタイダルウェーブ作戦、その後行われた英軍によるフォーミダブル作戦である。その被害で一時燃料生産が半減する被害を受けたことがあった。
流石に修復されたものの、まだ北アフリカから爆撃される可能性は残っていて、国防軍も軍需省も、懸念していた。
ヒトラーは、参席していた空軍武官と海軍武官、そしてシュペーア軍需相へと視線を向けながら答えた。

「ふむ…防空戦闘機を増強させねばならんな。地中海のUボートの一部も、対空哨戒に当たらせられないか?レーダー基地の増設はできるかね?…もしかして、日本軍の策も同じような物かもしれんな?」
「と申しますと?」

ゲッベルスが不思議がると、ヒトラーは答えた。

「テキサスだ。日本軍が油田をすべて破壊できるとは思わんが、一部にせよ損傷させればアメリカもそちらへの対処に追われるだろう」
「……」

ヒトラーの言葉に、カナリス提督が考え込んでいた。

「アメリカも油田防衛の為に備えておりましょうし、日本軍が一時期の米英軍のような1000機爆撃をやれるとは思えません。そこまで無謀な作戦は取らないのでは?」
「案外、ありうるかもしれません。実際にアメリカ国内では対日戦に集中するよう求めるデモや、我々との和平を求める運動、戦争そのものをやめるよう求める反戦デモなどが起き、各地で世論も世情も混乱しつつあります。そこに賭けるつもりかもしれません」



こうしてヒトラー達が議論している頃…

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