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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 154

この戦いにドイツが勝てば、アメリカが再度の大陸反攻を策するには、イギリスを飢餓に陥れるよりなくなる。
元よりアメリカもそれを承知で強引にイギリスを占領してまで今回の作戦を発動している。
もし失敗したら、戦争そのものをあきらめるか、地中海方面でユーゴスラビアやギリシャのパルチザンを支援するなどしてちまちまと突っつき続けるしか無いだろう。

「先日の会議の通り、和平の条件としては彼らが大西洋の東の事には口を出さない事、これにはイギリスからのアメリカの撤退も含まれますが、基本はこの線で行くことになっております」

進行役のボルマンの発言に、リッベントロップ達が頷いていた。

「失礼いたします。太平洋方面より重要情報が入りました」

入ってきたのは、アプヴェーア所属の海軍士官だった。

「ノルマンディー上陸に呼応して、日本軍がカリフォルニア方面の攻勢を開始したとの報告が入りました。サンディエゴを制圧すべく、海軍の支援を受けつつ陸軍部隊が順調に南下している模様です」

この一報に、高官たちもどよめいた。
だが、興奮しつつもすぐに思案顔になった男がいた。
宣伝大臣のゲッベルスだ。上陸阻止に成功し、「大西洋の壁」がいかに堅牢で見事に連合国軍を弾き返したか、または失敗して上陸を許した場合、それぞれの宣伝の仕方は入念に考えていた。同盟国の動向と連携させる場合もありうると一応予測はしていたが、日本軍がどう戦闘を展開していくのかまでは彼も知らないので、どう宣伝するか思案していたのだ。
だから、彼はすぐに挙手した。

「サンディエゴ制圧、つまりカリフォルニア州全土の制圧が日本軍の目的なのですか?」
「我々の見立てでは、そうなっております。
ただ…我々がノルマンディで連合軍を跳ね返したとして、日本軍が同時にカリフォルニア全土制圧に成功しても、戦況は膠着するとは限りません。
連合軍が大陸反攻を再準備するのに、最低でも半年はかかることを考えますと、米軍はまず日本軍を自国から追い出す事を優先すると思われます。日本軍とてその事は承知しており、戦争を終わらせる手を打っているようなのですが、これについては機密保持が徹底していて、我々にもわからないのです」

ヴィルヘルム・カナリス提督が答えた。

「ふむ、よくわかった。シェレンベルク君、SDでは何か掴んでいるかね?」

ヒトラーが新たに問いを発する。

「具体的にどういう手を打つのかは判明していないのですが、三菱が3000馬力空冷エンジンの試作に成功しつつあり、また三菱において単発・双発の戦術航空機の生産数が減少傾向にあるという情報が入っております。Ju390のライセンスを供与したので、そちらに注力しているだけとも考えられますが、ただ気になる事に、彼らが生産したJu390をを配備されている部隊が皆目不明なのです。あれだけの大型機なら、飛行訓練を目撃されそうな物なのですが」
「なるほど、どちらも日本軍の『切り札』がどういう手なのかは掴めていないというわけか…だが、アメリカ人がカリフォルニア奪還に集中してくれた方が我がドイツとしては都合が良い…まあ、どんな手なのかはいずれわかるだろう」

そこでシュペーアが発言した。

「一つ懸念があります」
「何かな?」
「プロエシュチや各地の燃料工場です」
「燃料問題というわけだな」

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