PiPi's World 投稿小説

太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

の最初へ
 141
 143
の最後へ

太平洋の荒波 143

包み込むように襲い掛かってくる流星隊。
「高角砲により流星1機撃墜と判定!」
すでに流星隊は雷撃進路に入っている。
「機銃により流星2機撃墜と判定!」
そして、流星隊はぎりぎりまで突っ込むと、魚雷投下の挙動・・・魚雷投下で軽くなった機体が浮き上がるのを押さえ込むように、わずかに機体を上昇させ、直後に元の超低空に戻し、「淡路」の前後を通り抜けてゆく。
「戻せ!舵中央!」
このまま直進に戻して突っ切れば魚雷の間を割って進むことでかわしきれると見た嶋取艦長は命じた。
実戦なら前方と左舷側から魚雷が疾走してくる。その中に割り込むように、「淡路」は走る。
失敗すれば艦首を大破して大幅に速度が落ち、またトリムが狂って主砲の照準にも支障を起こす。
双方の動きは逐一、統裁官に伝えられる。
下った判定は、
「艦首方向の魚雷、回避成功!左舷中央バルジに魚雷1命中!浸水!」
だった。
「全ては避けられぬか・・・・。」
流星隊の雷撃を最後に、攻撃隊は去って行った。
「武蔵」の対空射撃により流星2機、投雷後に撃墜と判定!」
迎撃機と直掩機との戦いも終わりを告げ、直掩機の烈風や疾風は暴風や流星とともに飛び去ってゆく。

「尾張」の艦橋では松田長官が状況を聞いて結果について検討していた。
「あの数の攻撃で魚雷の命中を1本にとどめられたのはまずまずだが・・・・・爆弾の回避をもう少し改善する必要があるな。」
「攻撃隊は第一機動艦隊の部隊でしたから、統裁官たちも雷爆の命中率を高めに見積もって判定を出していました。
実際にはどれくらい当てられたかは各飛行隊長からも聞く必要がありますが、どの攻撃機も臆せず深く踏み込んで攻撃していました。米軍の艦長でもあれ以上に上手くかわせる者は少ないと考えます。」
「うーむ・・・・・。」
参謀の意見に、松田長官は考え込んでいた。
既に訓練の終了が伝えられ、「淡路」「仁淀」「里風」「村風」の4隻は定位置に戻っていた。
遠くには対潜哨戒機の「東海」がちらほら見える。
訓練時に脱落と判定された艦が雷撃されるような事態を防ぐべく、黙々と艦隊周囲で対潜哨戒に当たってくれていたのだ。


「これが「雄山」かね。すごいものだ。これならテキサス油田やデトロイトも爆撃できるな。」
航空本部長和田操中将は、その機体・・・6発爆撃機G11M「雄山」を見て唸った。
「この機体は本部長もご存知の通り、独ユンカース社のJu390長距離爆撃機の製造権を取得して我が国の生産体制に適合するよう手直しした上で完成させたものです。例えばエンジンですが、木星三三型ル を搭載して2180馬力、実用上昇限度10500mを実現しました。」
傍らの森里大佐が説明を続ける。

SNSでこの小説を紹介

戦争の他のリレー小説

こちらから小説を探す