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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 140

「里風」の艦長も回避を試みるが、制圧部隊のほうが1枚上手だった。制圧任務機はわざと散開し、2方向からの同時攻撃に切り替えたのだ。これでは取舵を切れば左舷後方の機が、面舵を切れば左舷前方の機が痛烈な一撃を見舞ってくるだろう。
散開した相手の微妙な位置から、艦長は取舵を切った。駆逐艦の舵の効きは早い。まもなく艦首が左に振られ始めた。
そこに、暴風が攻撃機動を取って飛び越えていった。
「これは・・・・かなり食らったな。」
艦長は呟いた。
統裁官たちはサイコロを振り、「「里風」、1番罐室に250kg爆弾1命中、3番砲塔後方に同じく1命中、2番砲塔に同じく1命中!3番砲塔後方の直撃弾により艦尾切断、航行不能と判定!!」
「噴進弾3発命中により左舷側機銃全基全壊、魚雷照準装置全壊と判定!」
と判断した。
艦長は「両舷停止!」を命じ、「里風」は漂うことになった。
「村風」「里風」が抜けた穴を他の駆逐艦が埋めようとするが、その前に攻撃隊は穴を突破していった。
次に狙われたのは、防空巡洋艦「仁淀」だった。
陣形の中央に時計回りに「大和」「武蔵」「淡路」「尾張」と2列縦隊で4隻が並び、その後方を「仁淀」が固めていた。
潜水戦隊旗艦として建造されるはずだったこの艦は、戦争の推移により防空巡洋艦として建造され、長10センチ高角砲を連装8基16門、40mm機銃連装8基16丁、25mm機銃29丁という対空戦闘艦として完成したのだ。
「仁淀」の艦上では砲員や機銃員が必死に狙いをつける。彼らにとってもいざ実戦となった時、1機多く撃墜できるか出来ないかが生死を決しかねないのだ。
「仁淀」を襲ったのは流星6機だった。
6機の流星はおのおのが異なるタイミングで、突如として加速する。左右に1つずつ炎が見える。ブースターロケットによる時限加速だ。
対空砲の照準を幻惑する戦法として、同じ艦を狙う機体が小隊単位又は個々に異なる機動を行って撹乱する戦法は、最近母艦航空隊を中心にあちこちで取り入れられ始めていた。
流星の場合、制圧任務には250kg爆弾が2発、爆弾庫内搭載及びロケット弾を左右主翼下に12発ずつ装備で反跳爆撃を行うか、
800kg三号爆弾(成型炸薬弾を詰めた親子爆弾。元は対空用に戦闘機に搭載する30kg爆弾だったが、制圧爆撃用に大型のものも開発された。投下後に時限信管で炸裂し、直下の円錐状の範囲にあるものを破砕する。)での急降下爆撃を行うとされており、今回は反跳爆撃での訓練となった。
照準訓練をしていた「仁淀」の砲術員たちも、バラバラな相手の機動には追随しきれず、ロケット弾発射ランプの明滅と爆撃機動を行ってから右水平旋回して艦の後方を飛び去ってゆく流星を見送っていた。

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