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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 139

旋風隊の今回の任務は本来、艦隊の防空であるから流星や暴風めがけて突っ込もうとするが、烈風も疾風も横合いから突っかかってきたり、正面攻撃を挑んだりして、旋風を容易には流星や暴風のところへは行かせない。
本来なら旋風の最高速度は烈風、疾風、暴風のいずれをも凌ぐし機動性も高いのだが、その速度を最大限に発揮できるのは高高度であり、邀撃戦であるこの空戦では暴風や流星の飛ぶ高度へ行かねばならず、思うように力を発揮しきれない。
それでもハ43水星の双発のパワーを活かした一撃離脱は、少なからぬ数の烈風、疾風を撃墜判定に追い込んでいるのだが、横から襲われるなどして旋風も1機、また1機と撃墜判定されてゆく。

「220度方向よりの敵機を視認!機数は約70機!」
各艦の見張員たちが報告する。
暴風が先陣を切って超低空から突進する。対空砲火制圧部隊に擬せられているのだ。
同時に、直掩機の紫電改40機がこれら攻撃隊に向かってゆき、艦隊近くで烈風隊との戦いが始まる。

各艦の艦内では、統裁官たちがサイコロを握り締める。敵味方の動きから、自分の担当する艦の被弾状況をサイコロで判定するのだ。
攻撃機の側でも、噴進弾の発射を示す訓練用ランプなどが装着され、点灯を見た艦艇乗員から統裁官に連絡が行くとサイコロで被弾数や被弾箇所を判定するのだ。
まず制圧任務の暴風が駆逐艦2隻に4機ずつで攻撃した。
狙われたのは新雲級の「村風」と「里風」だった。
明らかにスキップボミングを狙った機動で、暴風8機が突進してきた。
砲員や機銃員たちは必死に狙いをつける。
12.7cm高角砲も25mm機銃も、最近配備の始まった40mm機銃もだ。
「村風」の統裁官たちは必死にサイコロを振る。
同時に艦長は左舷後方から突破口を開きに来た暴風の進路をそらそうと、転舵を行う。
だが暴風は横滑りでそれに追随し、ロケット弾発射を示すランプを明滅させ、さらに爆弾投下の機動を見せ、飛び過ぎて行った。
この模様は統裁官に伝えられ、サイコロの目で「1番主砲、4番、7番機銃に噴進弾命中、いずれも全壊!」
「反跳爆弾、左舷艦首及び高射装置に各1弾命中!高射装置全壊、艦首部浸水により最大速度20ノットに低下!」
と判定された。
「村風」は被弾を示す発煙を行いつつ、20ノットに減速して落伍してゆく。
「里風」は「村風」からみて左舷前方にいたが、こちらも食いすがるような形で接近してくる制圧任務機4機に狙われた。
こちらも同じように攻撃を受けたが、統裁官の判定により対空射撃で暴風1機を投弾前に撃墜したとされ、3機の攻撃としての計算になった。

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