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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 130

案の定、バラクーダ隊は甲斐が自分達の懐へ懐へと入るような動きに搭乗員たちの身体が浮き上がり、思うように操縦できない。
「ちいっ、投下!」
バラクーダ隊は次々に爆弾を投下するが、甲斐の左舷側にむなしく水柱を建てるだけだ。
TBF隊が放った魚雷も、艦首で掻き分けるように進む甲斐の艦首波で左右にそらされ、全てが外された。
大和型戦艦の艦体を流用しているだけに運動性はよく、甲斐は見事にかわしきったのだ。
甲斐から周囲を見渡すと、駆逐艦2隻が黒煙を上げ、別の1隻は艦首が沈下している。
留萌も爆弾1発を浴び、後部砲塔の1基が残骸になっていた。
そして、敵機は全機が投弾を終えたのだろう、引き上げていった。
烈風と暴風の一部がそれを追いかける。
追撃で数機を撃墜したところで、この空襲は終わった。

甲斐の艦橋。
「被害状況はどうなっている?」
有馬長官が尋ねる。
「はっ。留萌、宵月、満月がそれぞれ爆弾1命中、天津風が魚雷1本を被弾し大破しました。天津風は浸水が止まらないとのことで総員退艦が命じられました。」
「すぐに乗員を救助せよ。」
「はっ!」
「伊吹と10駆を欠いた状態で、何とか凌げたな。」
「彼らが船団を捕捉攻撃できることを願いたいです。今回の空襲の規模からして、敵空母はこちらに全力を向けてきたと思われます。もうしばらくで船団を捕捉出来るでしょう。」

有馬長官と参謀たちが話している間にも、甲斐は艦首を風上に向け、被弾した機から順に収容を始めている。
アングルド・デッキに斜めに着艦している間にも、艦前部の飛行甲板では、今回の空襲までに準備が間に合わなかった暴風が数機、発艦を開始していた。
烈風が一度全機着艦して補給・整備を受ける必要があるからだ。
そこに、偵察に出ていた天山からの無電が入った。
「敵空母2隻を発見、位置はディエゴ・ガルシア北西沖34海里」
「ふむわかった。今からなら1回空襲を行えるな。」
有馬長官は空を見ながら言った。
「早急に敵空母部隊に攻撃準備!」
「はっ!」
迎撃戦闘に参加した機体を収容する飛行甲板、1度目の空襲の損傷機を修理していた格納甲板は攻撃準備命令でさらに騒然となる。
しかし、その中でも整備員、搭乗員ともに冷静であった。そして
「戦闘機隊、準備出来次第発進せよ。」
と命令が下った。
グオオォォーン
比較的攻撃準備が簡易で、また航続距離が長い制空戦闘機隊が発進していく。それに続くように
ゴオオォー
爆撃機、攻撃機(雷装)の順に飛び立っていく。
ギュウゥ〜ン
艦隊の上で編隊を組むと攻撃隊は敵艦隊を目指した。

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