PiPi's World 投稿小説

太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

の最初へ
 123
 125
の最後へ

太平洋の荒波 125


空母「甲斐」の艦橋。
有馬正文司令が参謀達に質問する。
「空母部隊は見つからないのか?」
「残念ながら天候はあまりよくありません。雲量が多いのです。」
「天山隊はどうなったのだ?彼らは電探を搭載しているのだろう?」
「英空母部隊の動きに関する最新の情報はドイツ海軍が南アフリカ沖で目撃したということです。船団より北方にいるとは思われますが、いまだ・・・。」
「それよりも船団を攻撃しましょう!上陸部隊さえ消滅すれば敵艦隊がここまで来た意味など消え去ります!敵を師団単位で海没させられる今こそ好機です!」
決然と有馬長官は命じた。
「そうだな。全力攻撃だ。暴風全機を投入し、船団を覆滅せよ!」
「はっ!」
艦橋は騒然となり、命令が発令されて艦内は騒然となって準備が進む。
暴風に250kg爆弾6発や、九一式航空魚雷2本が吊り下げられ、準備なった機体から順に飛行甲板に上げられてゆく。
烈風も同様で、こちらは爆装は無かったが、20機が護衛として参加する事になった。
ちなみに残る20機はすでに上空にあり、警戒を続けている。
「船団を完全に覆滅する。伊吹と第10駆逐隊を空襲後に突入させよう。」
第10駆逐隊は水雷決戦の切り札として設計された島風級大型駆逐艦4隻よりなる駆逐隊で、島風級は4連装魚雷発射管3基に次発装填装置装備で24本の酸素魚雷を搭載しつつも対空戦闘力も考慮して主砲には八九式高角砲を用いた艦であるが、基準排水量3900トンに達する大型の艦体と高性能から来る高価さがネックとなり、1個駆逐隊分、「島風」「大風」「爽風」「晴風」の4隻のみが建造された。
新設計された艦本式ロ号缶とギヤード・タービンで公試では38.9ノットを記録した。

整備員や兵器員、搭乗員達が準備に走り回る。
「搭乗員整列!」の掛け声とともに、搭乗員達は艦橋前の台の前に並ぶ。
有馬長官が台に上り、訓示を行う。
「諸君らの任務は船団撃滅の第一撃となることである。輸送船もそうだが、護衛空母は確実に撃沈せよ。敵護衛艦は極力損傷させよ。本艦は必ず諸君を迎えよう。私は諸君ら全員と再会することを望むものである。」
そして、飛行長の「かかれ!」の号令と共に搭乗員達は自分の機体へ乗り込む。
護衛の烈風隊、それにそれぞれ爆装や雷装、増速用ロケットブースターを積み込んだ暴風隊が甲斐の飛行甲板に並び、ハ43水星やハ214木星改の爆音を響かせて大直径4翅プロペラを回している。
既に「甲斐」は艦首を風上に向けて全力で航進している。
まず、烈風隊が発艦する。こちらは増槽だけなので楽に発艦してゆく。
暴風隊はまず一部の機体が油圧カタパルトで押し出され、滑走距離が十分に取れるようになった機から自力発艦していった。
そんな彼らを、乗組員たちは帽振れで送り出した。

SNSでこの小説を紹介

戦争の他のリレー小説

こちらから小説を探す