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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 121

一発が一個梯団を丸呑みにさえする、戦艦部隊の砲撃もB29のクルーを戦慄、あるいは冥府へ叩き込んだが、石狩級や秋月級も、主砲の連装高角砲を最大仰角―垂直―にして猛烈な射撃を行なっていた。
この強烈な反撃は、日本軍の高射火器の前にはB29と言えども逃げられない事をクルー達に刻み付けていた。

「ガッデム!これでは全滅だ!!全機退却だ!」
さすがのB29部隊も、空しくハワイの島々の周りの海に爆弾を棄てて退却していった。
一部の暴風と飛燕改はさらに追跡をかけてB29を狩る。
こうして、ひとまずは米軍の空襲を跳ね返したのであった。
真珠湾を出て敵進路に先回りしていた石狩級大型軽巡や秋月級駆逐艦の射撃も凄まじいものであったが、この時期になると陸海軍ともに砲弾の炸薬も、新式爆薬である森本爆薬系のものに変更が進み、一弾の威力が増加していた。
このことを利用して、陸軍では自走榴弾砲にも対戦車戦闘を割り当てるようになったのはもうしばらく先の話である。

今回の大被害で、日本軍相手でも空襲するなら1000機は必要と考えられるようになり、機体やクルーを大西洋方面と奪い合う結果となり、英本土へ補充される爆撃機や長距離戦闘機の割り当てを巡って米軍高官たちは激しい議論を始めていた。
「西海岸が危ないのにイギリス偏重なのはどうかしている。」と言う意見や、「パナマ運河復旧にしばらくかかる以上、ハワイの日本軍にも1000機爆撃をかけ続けるべきだ。さもないと西海岸が本当に危なくなる。」と日本軍への攻撃を主張する者もいた。
また、「旧ソ連を下して圧倒的な資源大国と化し、ウクライナやベラルーシを手なずけたドイツを放置できない。」「イギリスが脱落したら東海岸も危なくなる。工業力ではドイツのほうが質量共に日本より上だ。」など、さまざまな主張が交錯して容易に結論は出なかった。
その間にも英本土空輸作戦は続けられたが、やはり船舶輸送に比べて輸送量に限度があった。
船舶輸送はエレクトロ・ボート対策がこれといって進まないまま継続せざるを得ず、こちらの被害も馬鹿にならなかった。
ヨーロッパではイタリアが枢軸国でただ一国苦境に立っていた。如何せん弱すぎたのだ。
「敵機来襲!」
連合軍機がイタリアを空襲する。
ヒュルルルル
ドカン ドカン
ヒュルルルルル
ズズーン
「撃て撃て!撃ち落せ!」
ドガガガガガガガガ
対空火器が火を噴くが
ヒュゥイィーン
連合軍機は優々とその上を飛び去っていった。

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