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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 116

だが、戦火がやんだわけではない。
サンディエゴなどを起点に米軍の潜水艦隊はハワイ方面への日本の輸送船団を襲撃して護衛部隊と死闘していたし、大西洋ではようやく十分な稼働率が出せるようになった、新型の大容量電池と大出力電動機を装備した水中高速潜水艦、エレクトロ・ボートと呼ばれる新型Uボートが暴れ周り、護衛空母を初めとする護衛艦艇を船団ごと沈めるケースが多発してイギリスの燃料・食糧事情を極度に悪化させていた。

さらに、この頃になると日本の酸素魚雷がその調整に職人的な整備手腕を必要としたのに対し、供与された酸素魚雷を参考にしつつ整備性を高めたドイツ製酸素魚雷を携行するUボートが増え、護衛空母を1撃で真っ二つにすることも珍しくなくなっていた。
ホワイトハウスでは、英本土上陸作戦の可能性は低いと見ていたが、英独単独講和やチャーチルの失脚の危険は大きいと見ていた。
ソ連降伏以降、西でも巻き返すドイツ軍はハインケル社とメッサーシュミット社にジェット戦闘機を生産させ、ドイツの軍需産業を爆撃する米英の重爆撃機B29、B17、アブロ・ランカスターなどを次々に叩き落した。
1000機もの重爆が大挙して押し寄せる猛烈な爆撃戦と迎撃戦になっていたが、R4Mロケット弾などを装備したドイツ軍のジェット戦闘機隊やHe219などの夜間戦闘機部隊は猛烈な抵抗を見せ、さしものアメリカでさえ、相次ぐ大損害に戦略爆撃の停止を真剣に検討していた。
英本土に駐留する第20航空軍司令官カーチス・ルメイは、現状の兵站状況の悪化に怒りが収まらなかった。
訓練を兼ねてB29にまで対潜哨戒任務を与えざるを得なくなる上に、燃料や爆弾の供給にも不自由が生じ、既にドイツ本土爆撃にしても無差別都市爆撃は停止して、軍需工場やキールなどの軍港といった軍事目標への爆撃のみに目標を絞らざるを得なくなっていた。
そのため、ドイツ軍の運用している港は軒並み狙われることとなった。
理由は唯一つ。エレクトロ・ボートを初めとするUボート部隊の基地を潰してUボート部隊の運用効率やUボートの新造を遅延させる為である。

ドイツ本土ではキールやハンブルグ、他に占領下フランスの大西洋岸の港、さらには英本土から遠く、長時間迎撃を受けて爆撃機部隊の被害率が大きくなるにもかかわらずダンツィヒなどへの強行爆撃まで行われた。
だがそれは結果としてははかばかしい効果を生まなかった。

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