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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 115

爆弾の炸裂で扉が吹き飛び、屑鉄になる。
複線式運河であるパナマ運河のミラフローレス閘門は左右共に破壊され、使用不能になった。

「あとは帰るだけだ!なんとしても生きて戻るぞ!!」

晴嵐隊は反転し、必死に沖を目指す。
だが容易く生かして帰すほど米軍も甘くない。
運河破壊の贖罪か、又は怒りか。
戦闘機や対空砲火が執拗に追ってくる。
海面を這い進み、敵戦闘機の鼻先に13mm機銃を撃って幻惑し、なんとかパナマ湾を抜けて必死に飛ぶ。
ガガン!
ガソリンが炎上する炎がきらめき、1機の晴嵐が墜落する。

「3番機被弾!」
「了解!」
これでのこる晴嵐は6機。
隊長は歯噛みして悔しがりながらも必死に機を操る。
その間にも戦闘機隊の銃撃がときどき飛んでくる。


「ふう・・・・」
必死に逃げる晴嵐を追っているうちに銃弾が尽きたのだろう、敵戦闘機はいつしかいなくなっていた。
「母艦はどこだ・・・」
6機の12人の目が四囲を探し、また上空を警戒する。
「潜水艦らしきもの、見えました!」
4番機から報告が入る。
そこには危険を顧みず浮上している3隻の伊400級がいた。

「よし、近づいたら脱出するんだ!」
彼らは一度、高度を500mほどまで上げると、パラシュートで脱出した。

着水した彼らは乗組員の助けを得てなんとか母艦に泳ぎ着き、収容された。
発進した艦と違う艦に収容された者もいたが、敵地ゆえにそんな事を気にする者はいなかった。
3分の1の損失で作戦が成功しただけでも十分上出来なのだ。
そして、3隻は全速力で離脱する。
伊400は無事にハワイにたどり着いた。
伊401は途中で米軍の哨戒爆撃機に攻撃され、空になっていた航空機収容部などを損傷したものの、何とか生還した。
伊402は敵駆逐艦に追われて危うく撃沈されかけたが、からくも生還した。
ただ、無線通信などができなくなり、各艦ばらばらに逃げて撤退したことから、伊402は最も遠回りなルートで帰還することになった。
そして亡失と認定された当日にハワイ周囲の哨戒をしていた二式大艇に発見されて味方に生存が伝わるという事態になった。
こうして、パナマ運河は一時使用不能となり、連合軍の太平洋方面への戦力補充に重大な問題を抱えさせることに成功したのだった。



それと前後して、ハワイや本土の工廠では、生産が遅れがちで、例えば秋月級で2基搭載のはずの高射装置(高角砲の射撃管制装置)が1基しか搭載されずに竣工する艦があるなどしていたものが、ドイツから輸入した工作機械で製造数を増大させることと戦局有利で損害が少ない事から、計画通りの基数装備にする改装工事が多くの艦で進められていた。
その間に乗員たちはつかの間の休暇を味わっていた。

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