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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 113

1945年6月1日、小澤治三郎中将の機動部隊もハワイに入港し、兵士に休養が与えられた。

しかし、日本軍は攻撃の手を緩めたわけではない。少しでも気を抜けばアメリカ軍が息を吹き返すチャンスはいくらでもあるのだ。小澤機動部隊がアメリカ西海岸から離れると同時に、アメリカ本土攻撃の任を受け、攻撃地点に入っていた部隊があった。それは潜水艦部隊である。伊400、伊401、伊402である。この3隻は液冷エンジンの水上爆撃機を搭載していた。一七試特殊攻撃機「晴嵐」である。
伊400型の潜水艦は地球上のいかなる地域にも往復可能という驚異的な特殊潜水艦で、いわゆる「海底空母」の役目も帯びていた。
「本艦はこれよりアメリカ本土攻撃に移る。」
各潜水艦に3機づつ9機が搭載されていた晴嵐であるが、1機当たりの組み立てには5分以内、フロートの着脱も30〜45秒で出来る。3機が発進官僚に30分掛からないのだ。
「出撃!」
9機はあっという間に発進、潜水艦3隻はいつでも潜行できるようになった。
これだけ見事な出撃も出撃直前のハワイ沖での訓練の賜物である。
晴嵐はアツタエンジンの爆音を響かせて飛び去っていった。
ダイムラーベンツ社の技術者が来日してアツタの品質向上に貢献してくれたことも大きい。
おかげで、アツタの中でも状態の特によい物を選んで搭載したこととあいまって安定した動作を示していた。

そのハワイには機動部隊だけでなく、3種類の駆逐艦も集まっていた。
1つは松級と呼ばれる戦時急造型駆逐艦で、直線を多用した形状の工数のかからない艦である。
主に船団に随伴して対潜警戒に当たっていた。
2つ目は秋月型で、九八式65口径10cm高角砲連装4基8門を搭載した防空駆逐艦である。
3つ目は改夕雲型で、夕雲型の設計を簡易化して量産性を高めた上で、主砲を思い切って八九式12.7cm連装高角砲3基に変更して対潜装備も強化したものであった。
新雲型と呼ばれるこの艦は、汎用性の高さから重宝されていた。
雷撃力はそのままに、対空戦闘力の大幅な強化と、対潜能力の向上した点は現場では高く買われていたのだ。
既にネームシップの新雲(にいぐも)を皮切りに、大雲(おおくも)、妙風(たえかぜ)、清風(きよかぜ)、村風(むらかぜ)、里風(さとかぜ)、山霧(やまぎり)、海霧(うみぎり)、谷霧(たにぎり)、川霧(かわぎり)、山雨(やまさめ)、秋雨(あきさめ)、夏雨(なつさめ)、早雨(はやさめ)、高潮(たかしお)、秋潮(あきしお)、春潮(はるしお)、若潮(わかしお) と、増産が進んで次々に就役していた。

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