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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 100

「そんな……」
ケネディ大使は真っ青になる。
「皮肉な事に核戦争が起こらなかった理由は広島と長崎の原爆投下後の調査により影響が国を超えてこの星の生態系まで影響を及ぼす事になる……前世の我が国は冷戦時にこれを武器にする事で核の脅威を防ぎ、国際会議での発言力を得ました……それは被曝して死亡した二つの都市の住民と引き換えに得た物です」
「……今の状態は非常にまずいのでは」
「ヒトラーにどれだけの科学知識を享受しているのか不明ですが、すくなともアフリカや中東からハーゲンクロイツを退ける必要があります、大使はその理由を分かりますな?」
「核実験場ですね、ホワイトハウスやラングレーのオフィスも同様の意見でありこれが日本との講和をするべきと言う根拠になっております」
ナチスドイツにより核攻撃は現実的にも起こり得る……その為には大西洋の制海圏は元より太平洋の制海圏も必要であり開戦寸前は数年で落せると楽観視していたが橘らの政治的工作より不意打ちを誘い込む所か自分達が不意打ちになる失態になり、ハワイを占拠されパナマ運河(当時)も破壊、太平洋方面の海軍各部隊の士気も上がらずトドメにロモアラモスを爆撃された。対ドイツ戦の為に日本を併合する“52番州計画”はラングレー史上最も愚策とされ計画作成最高責任者はロモアラモス爆撃と聞いた途端に拳銃で自殺、この計画書の写しは全て焼却され原本だけはある政府関連施設にある書物倉庫に半世紀近く隠匿される事になる。
「その為にYAMATO型を嫁入りさせたのですね……空母改修設計図と共に」
手塚がそう言うと橘は頷く。



インド洋では畝傍(二代目)を基幹とする潜水艦支援艦隊が作戦行動に入っていた。
「イラン/イラクがハーゲンクロイツに支配されたのは痛いですね」
「サダム.フセインがヒトラーの熱烈な信望者である事は間違いないな……最も彼を産み出したのは中東独自のイスラム社会だろう」
天海艦長は副長との会話をしていた。
「イスラム教社会は女性進出を良しとしない男尊女卑社会、識字が出来ない女性も珍しくない。故に西洋社会からの支配も受けてしまう」
無論この地域の若者の中には古典的なイスラム教社会に不満を覚える者も多く、フセインもその一人……彼は留学先でヒトラーの著作を読み漁りイスラム教の教えを順守する祖国は何れは欧州に支配されると確信した。そして第二次世界大戦が没発する頃にはナチス党の海外党幹部に上り詰め祖国を巣食う支配者を虐殺したと言う。
「例の核物質爆弾の事だが本当に恐ろしい物だな」
「はい……海軍の主力艦隊を動員してまでアメリカの研究所を爆撃したのはこの為だったんですね」
九鬼もロモアラモス研究所の被害模様を一部しか見てないがそれだけでもゾッとする。
「艦長、アメリカ海軍の派遣艦隊です」
「時刻通りじゃな」
天海は気を引き締めて並走する戦艦へと敬礼する。
「艦はニュージャージ……えっ」
九鬼は驚くのも無理はない、アメリカ海軍ではまずあり得ない艦のカテゴリーになっていたからだ。
「戦艦空母……」
「おおかた、後部砲塔をぶっ飛ばす事故を起して改装したのだろう……ほほっおっ、ヘリコプター空母と言う事か」
天海の読み通りニュージャージーはオーストラリアにて演習中に後部砲塔を丸ごとぶっ飛ぶ事故を起した。例えオーストラリアに戦艦を建造できる施設があったとしても戦艦として修復は不可能と判断し大戦前にお蔵入りした戦艦空母の設計図を慌てて引っ張りだし突貫作業で航空甲板にしたのである。艦載機の選定やその運用に関しては本当に苦労したがヘリコプターを多目的用途航空機に使う計画が米国海軍で持ち上がった時には関係者はこの戦艦に押し付けたのである。
戦艦なのに後部主砲を持たない、空母としては艦載機乗り泣かせのこの船はヘリコプター運用試験の母艦としては最適で数々の装置や運用ノウハウを産み出した。日本から嫁入りしたYAMATO型五隻にヘリコプター格納庫と発着甲板には自動ヘリ着艦固定装置があるが全てニュージャージーの運用により誕生したモノである。この装置は何れは大型艦に採用されるだろう……ヘリコプターは速度は遅いが従来の航空機では無理な機動も出来る、日本は海洋国家だが同時に3000m級の山を複数持つ国家でもある。ヘリコプターの恩恵は必ずあるのだ。
「私はおばあさんになっている頃にはこの畝傍(二代目)にも搭載されるんでしょうね」
その為にも彼女達を生き残らせる為に天海は思う、自分の寿命がせめてこの戦争が終わるまで尽きない事を……。
「まあ、潰鷹(かいよう)は正真正銘のヘリコプター空母になっているが……」

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