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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 96

この戦争が始まる少し前、英国からある軍事戦略に関する本が出版された。その本は英国では無視されたが列強各国の軍関係者、取分け陸軍戦車隊に関与する者達の称賛を浴びておりヒトラーはこの本を元手にドイツ戦車の開発/運用/戦術まで構築、自分の五十歳の誕生日には陸軍戦車隊のパレードにその本の著者を招待、そして彼は英国人でありながらナチスドイツ軍士官として第二次世界大戦に挑む事になる。
「ジョン.フレデリック.チャールス.フラー?」
飛鳥の艦橋にて葵川はその本を見せて言う。彼は海軍士官の時にこの本を読んで唸った、これは海軍にとっても重要なファクターになるからだ。
「そうだ、ロンメルの元に居たのが幸いだったよ。これで陸軍から分捕った軍事費の補填が出来る」
実際飛鳥を初めとする極光艦隊の戦艦は陸軍からの予算を分捕って実現しており葵川にとっては心苦しかった。だがロンメルの部下にフラーが少将として参加している事を知った途端に安堵の息を吐き、直ぐに本国に居る陸軍の同期に接触する手筈を整えたのである。彼は機甲戦術をこの世に産み出すも当時は軍縮と英国軍内の保守主義により軍上層部から煙たがれおり機甲実験隊の指揮すら与えられる事もなく1927年に歩兵連隊に続いてインドボンペイ軍管区指揮官任命の人事を聞いた途端に憤慨し任官拒否、1933年まで俸給半減の処分を受けて英国を後にした。その顛末に米国陸軍は仰天し慌てて彼を米国に移住させようとするもナチスドイツ第三帝国が少将待遇として招き入れた。
ヒトラーは彼も魔術やファシスト主義に傾倒している事を知っていた。フラーが英国軍に居た頃に機甲実験部隊vs歩兵&騎馬&大砲隊の模擬戦が実施されるも機甲実験部隊の惨敗、だが実際は審判側が対戦相手に買収、更に露骨な妨害もあっての事だ。陸軍出身でWWTの従軍経験もあるヒトラーはこの事を聞くなり密かに彼との文通を始めたのである。そのかいもあって英国を去った彼を迎え入れる時にはドイツ戦車隊は完成されていた。
「戦車戦術が何故海軍にも必要なんでしょうか?」
「うむ、海軍は物資と人員を運ぶ……戦車の戦術を知っていれば我々も輸送艦の設計や運用を変えざる得ないだろう、どれだけ消耗するかによってな」
艦橋に居た全員は納得する。
「場合によっては戦車も航空機で運ぶ事になるかもしれん」
「恐れ入りました」
「英国は保守主義に加えて戦勝してしまい、軍縮と言う流れが戦車の重要性を認識するのが遅れてしまった。結果大戦当初の英国戦車は各地でドイツ戦車に撃破、悪い事に多くいたフラーの信望者も戦死してしまい……結果、英国軍は重要な時に戦車の開発/運用に関する人材が居なかった」
結果的に紫の書を元にしてアメリカ流戦車戦術を完成させつつあったパットン将軍がM4とブラットレー大佐(当時)を英国軍に派遣して事なきを得ている。チャーチル首相は政府中枢では珍しく戦車の可能性を信じていただけにこの顛末を聞いた途端に青褪めている陸軍保守派の将校らを怒鳴り散らし残されたフラーの子供達は陸軍にて戦車開発/運用研究を続けるしかなかった。
「問題は戦後の彼の処遇だ」
「戦犯に吊るし上げされますよ……」
「うむ、防ぐにはそれなりに政治工作もしなければならない……最も彼は祖国に帰ると思うかね?」
「司令官?」
「ファシストに傾倒した男だ、祖国が許しても自分が許さないであろう。最悪第三国への移住も考えているかもしれん」
葵川も軍上層部から冷遇された経験を持っているだけにフラーの心情を察した。




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