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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 90

少し離れた場所に居た参謀本部長は伝令に耳打ちをする。
「プランに関してはこちらに居る大石 神三郎大佐が説明します」
トルーマン大統領に敬礼した彼は言う。
「進入方法はモーターグライダーを使用、ヒトラーの本拠地になっている別荘地に落下傘で侵入」
「当然夜間か」
「はい」
参謀本部長が尋ねると彼は頷く。
「モーターグライダーを引っ張るのは日本海軍の飛行艇を使用するのだな」
「そうです、まあ陸軍の中にはホワイトハウスを襲撃しようと言う動きもありましたが首相が止めました」
「賢明な判断だ、我々としても先のホワイトハウス爆撃は面子を潰された……宜しく頼む」
「モーターグライダーの操縦は我が国きっての工作員が担当する」
「帰りは落下傘を複数回使用して山岳地帯を下り、地元レジスタンスの協力で脱出します」
なるほど、こいつはかなりリスキーだが米国としては乗らない事は損する、参謀本部長はニヤリとした。



極光艦隊は米国新太平洋艦隊と合流していた。これにより印度洋での独逸通商破壊工作は本格的に物量戦を呈する事になりマダラスカル島奪還作戦も現実味を帯びて来た。
「話には聞いてはいたがガールスカウトではないのだな、本当にどうかしている」
「日本は人材も少ないです、独逸戦を想定して早くから女性士官活用を模索してました」
畝傍を旗艦にする日本海軍の独逸通商破壊工作艦隊との合流しこれまでの状況を説明する九鬼の姿に米国海軍の各艦長は彼女を一人の士官として接していた。
「航空甲板を持つUボートは確認してないのか?」
「はい……今後は出て来ると私は考えてます」
後にスレイプルと判明するのだがこの頃はまだ決まった名称もなかった。
「この調子ならハボックも出て来てもおかしくないぞ」
「ハボック?」
「氷山空母計画さ、人工氷の出来が悪くって計画はお蔵入りさ」
無論ハボック計画は頓挫したとはいえ国家機密になっているのだが笑い話として米海軍内では広まっていた。
「は、はぁ」
「とは言え今後はマダラルカル島奪還戦には日本海軍の力も必要になるのは事実だ」
「キーマン提督」
その場に居た全員が敬礼するも彼はよいよいと言う仕草をする。
「補給路を如何に死守するかも必要になりますね」
「うむ」
畝傍(二代目)が記録した海図を元にUボートの航路はほぼ特定しているがそこにUボートが居る訳でもない訳だ。


アメリカは日本との共同戦線を取らざる得なくなり太平洋戦線の各艦隊司令官らは不満に満ち溢れているがホワイトハウスを爆撃された今ではその信念すら隠さないといけなくなった。講和後は日系移民の強制収容状態を解除、接収された資産返却も始まっていた。日系移民が接収された資産が却ってこないとなると失望して日本へと戻る事すらあり得るからだ。無論それを受け取った白人層からは不満の声もあり訴訟も起きている。
だが、今の米国大統領はドイツに勝つためには一ヵ月前の敵国から来た移民に対してもそれなりに対処しなければならない。アメリカ単独ではドイツに勝つ事は難しい……だが現場指揮官は幻想の様にアメリカ最強を信じており、南部白人層にその傾向が高いとも言われている。新太平洋艦隊総司令官であるキーガン提督は他の艦隊司令官からはあんまり好ましく思われてなく、ハワイ奪還作戦が実行されなかったのは彼の意見が大きかったからである。力押しにすると大西洋や米国本土が薄手になる、その為に第二パナマ運河要塞やパナマ運河を“第一パナマ運河要塞”として整備、その完成の矢先に日本との講和にホワイトハウス爆撃は太平洋戦線に配属された米将兵に不満を渦巻く事になったのである。キーガンはそんな連中を尻目に日本海軍との共同戦線を取る為にオワフ島に三分の一程残してインド洋に進出、途中沖縄那覇沖海軍基地にて給油や消耗品補給を受けて来たのである。これには日本としてもかつての敵国とは言えドイツに対抗するにはアメリカを利用するしかない。

無論日本軍でも米国との共同戦線に懐疑的な意見もあるのは事実だが同盟国の亜細亜各国では対抗できない。米国剥抜きでドイツに対抗出来る妙案はないのだ。
「中国情勢はどうですか?」
「難しいですな……共産党化を防ぐ為に満州国を建国、蒋介石は台湾を独立国家になってます。英国は香港を20世紀末辺りの返還を考えてます」
飛鳥の司令官室にてキーガンと葵川は会談をしていた。
「共産化防止のために都市国家として承諾する案もあるそうですが」
「うむ、中国の共産化はソ連次第と思います。ソ連から共産党幹部がかなりの数が亡命していると言う事です」
「なるほど……噂は本当でしたな、シベリアでは共産党の中央幹部が殺害、組織的に隠ぺいされている」
「はい……あの地は元々は流刑地ですのでソ連内でも差別意識があったんでしょう」
「満州国への流入もあるのですか?」

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