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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 82

九鬼は女性でありなりらもここら辺の事は周知しているのはやはり技師士官を父に持つからであろう。天海も同様の指示を出しているのだが大抵は副長である九鬼がする、だから彼女が天海に指示を仰ぐ時は大変な時である事が多い。数時間後、海松と空松に乗船していた海坊主らも手伝い、主翼の一部引き揚げに成功するのである。畝傍の後部甲板に括りつけられた。
「越後がこちらに来るそうです」
未確認の新型機と言う可能性もあるので亜細亜派遣艦隊の乙部隊が主翼の一部を運ぶ事になった。
「球磨を旗艦に先遣隊が向かってます」
「ありがたいわね、Uボート警戒を厳にします」
「うむ」
天海は本当に九鬼が出す判断には信頼を置いており、周囲には補給の交渉しか出番が無いと愚痴っているが実は彼女は交渉でも行き詰った時は数回しかないのだ。

球磨(くま)は球磨型軽巡として大正時代に設計されたが5500tの排水量を誇る事から内外の軍関係者らは別名5500t級軽巡とも呼ばれており僅か五隻しかないが何れも重雷装備を施しており、戦後水上戦艦として脅威であり“大和型でも飛鳥型でもなくこの球磨が最も脅威だった”と米海軍関係者が漏らしている。何しろ両舷には四連装魚雷発射管砲塔を備えており、水上艦での雷撃戦が最も生かされる海域や戦況では脅威になる。後部には射出型迎撃機雷や爆雷投下装置を備えている。
「畝傍(二代目)も良く変なモノを拾うな」
「天海教官最後のお勤めですから、変なモノには縁があるのでは?」
「一度日本本土に戻してお祓いして貰うように提言するわ」
球磨(くま)の艦橋にてため息つきつつも進む、周囲は松型駆逐艦数隻が陣形を組んで進む。
「畝傍(二代目)は現在対潜警戒を厳にしてます」
「ほう、やるじゃないか……女と思っていると酷い目にあうな」
艦長も自分が畝傍の艦長ならそう判断しているからだ。独逸軍は恐らく何が何でも沈めるだろう。
「こりゃあ相手も相当な技量でないとつりあいませんな」
「航海長、それはUボートの事か九鬼副長の婿殿どっちだ」
「双方です、うちの愚息では到底無理ですが」
航海長も頭の片隅では家庭の事も考えているようだ、艦長も他人事ではないので笑えない。
「安将丸を確認、続けて旗艦畝傍(二代目)を確認……思ったよりもデカイですね」
「琵琶湖型でないとダメだな」
安将丸に載せ替える事も考えたが任務を考えると得策ではない。96式艦爆が全機哨戒飛行を行っていたが狩鷹が四期飛来し畝傍周囲に着水、ソナーを下ろし即席の防潜体制を取り、その場に居合わせた松型駆逐艦が警戒態勢を取る。
「感あり!」
球磨(くま)の艦橋に緊張が走る。
「識別急げ!」
「漁師3、離水!海松識別爆雷投下します!」
爆雷が投下されると潜水艦は進路を変更した。
「Uボートの駆動音です!こちらに向かってきます!」
「右舷各魚雷発射砲塔発射準備!機関戦闘速度!」
「新たなる機関音を確認!数は3」
「群狼戦法か……味な真似を」
やはり主翼回収作業を潜望鏡で確認していたのだろう……海洋迷彩には気を使っていると言う話も嘘ではない。
「新型の対潜魚雷を使いますか」
生産を開始して球磨(くま)に搭載しているのは僅かだ。
「通常魚雷と混ぜ込んで使用するぞ、各砲座に通達」
球磨型の特徴としては艦中央に自動装填装置があり荒天時にも僅かな人数で魚雷を装填可能でありこの様に艦橋からの魚雷変更にも対処できるのだ。
「対潜魚雷シ号及び通常魚雷発射!」
潜水艦とは異なり砲塔型魚雷発射管は水圧を利用しない、圧縮空気を利用する。この種の艦艇は日本帝国海軍のみしか運用されてない、独逸や亜米利加でも計画されたが図上演習にて魚雷を発射する前に砲撃でやられると言う結果を踏まえて廃案になっている。無論日本帝国海軍でも同様の結果が出たのだが砲撃とは一発で命中する事は極めて少ない。
ましてや動いている戦艦を一撃で仕留めるとなるとこの大戦で使い始めた墳進弾しかないのだが数は少ないし製造の手間は砲弾よりもかかる。更に命中しても致命傷になるとは限らない、武士道が根が付く日本海軍は“死を覚悟する”精神を持っている事が多い事や工業力が劣っている事も要因とされている。この世界大戦からは空母や航空機が主役になりつつあるが逆に言えば空母や護衛する戦艦を雷撃すれば勝敗を決すると言う事になるが独逸も亜米利加もそこは潜水艦や駆逐艦が担っている、日本の場合はそれに加えて球磨型で対抗したのである。
「多弾頭短距離子魚雷闘魚及び通常魚雷発射!」
右舷から魚雷が次々と飛び込んでいく。
「敵魚雷接近」
松型各艦が対魚雷の為に船体を呈する形を取り爆雷をばら撒き水柱が巻き上がる。
「魚雷通過、二本です!」

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