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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 9

だがそれは対日本戦のボルテージと言う国民世論を上げるのには十分過ぎると思いがちだが何らかの事情により星条旗の元に残った日系や独逸、伊太利移民らにとっては悩ましい展開でこの三ヶ国の移民らは手を取り合っていると言う奇妙な状態であると言う。
「流石の坂本大将も悩ましいですな」
「李家(りのいえ)……お前まで予備役に志願する事は無いだろう、せっかく祖国が独立したのに」
予備士官である同年代の男性は苦笑する。
「私が物心ついたころには李氏朝鮮王朝は既に無く、バルチック艦隊が攻め込んで来ると言ってもロシアに対抗できるほどの近代軍すらなかったですからね。むしろここで働いてたほうが貢献できると思いますよ」
東南アジア産の珈琲豆を手際よく機械にセットし焙煎、まるでサテンのマスターの様な振舞いだ。
「まったく、お前の様な奴が現場に出れなかったのは痛恨の極みだ」
「時代ですよ……私の祖国はその流れに飲込まれた。私が今更高麗半島で如何こうし様と喜ぶのは米国ですからね」
「……気になるのか?」
「腐っても李氏朝鮮の王族ですからね、私の危惧は半島の共産化です」
「うむ……日本統治は朝鮮人の心情すら踏み弄った様に見えるが近代化に乗り遅れた国家程哀れなモノはない。文明を破壊されつくして滅んだ所は幾らでもある。その為にも高麗には民主主義国家であってほしい。共産主義は一見して良く見えるが王朝が党に変わったのに過ぎない……スターリンの粛清がその一例だ」
「大将は私に皇族縁の娘を嫁にするなっと言いましたね、あれは今でも正解と思います」
「すまないな」
「あの方も妻も納得してますよ、今頃は天国で茶会でもしているでしょう」
暫くすると少女士官が入室する。
「坂本大将閣下、特一級事案書類をお持ちしました」
「ご苦労、どうかね慣れたかね」
「はっ、はい!」
少女士官から蝋封印された書類を受け取る李家に彼女は返事する。
彼女は東北出身の某農村で口減らしの為に軍人向けの女郎宿に放り込まれる筈であったが初等学校での成績が優秀で地主が大の愛国者とあって近くの少女士官学校に通えるようになり、卒業後はここに配属された経緯がある。
「でも、オラの様なもので……あっ」
「言葉には苦労するかもしれないが慣れるよ……他のみんなはどうかね?」
「はい、問題ないです」
坂本は彼を見るとため息をついた。本来なら彼女と同じ位の孫が居てもおかしくないのだが……彼には子供が居ないのだ。
だが彼は不満は無かった、日本人として、軍人として生きていけるのなら鬼籍になった妻に子供が出来なくってもよかった。仮に子供が居れば半島に動乱が起きかねない、その事をよく知っているのだから。
「では、会議に出てくる……多分夜通しになるかもしれん」
「分かりました」
李家の異名は軍服を着た執事と言われている。


会議は技術論になる……今回は拿捕した米海軍戦艦に登載する防空兵装だ。
「上村船長は対墳進弾防御兵装研究に協力したいと言う訳か」
「はい、これは他の五隻の船長も同じ考えです……墳進弾は現在の所は無線誘導やジャイロ誘導やら考えられますが一番効率が良いのは視認による誘導です」
「可能なのか?」
「爆撃機の標準と同じと考えてもらえば……」
技術将校はそう告げた。
「現在の所は赤外線対策として火の玉(フレア)、レーダー対策に金属箔を考えてますが万能ではありません。偽装炎上装置を考えました」
図面を出すと会議出た面々は驚く。
「なるほど、照明により炎を演出するのか……」
「これは太秦で特殊効果している幼馴染がしている手段でしてね……最も役者さんは本物の火でないとノル気でないらしく……」

「なるほど……本物の火を出す訳には以ても他である我々にとってはうってつけじゃな」
「電探連動による高速回転機銃装置は試作型が完成してます……ただ問題が」
「遠慮する事ない」
「薬莢の処理です、知っての通り弾丸が発射された薬莢は大変熱くそれが数分も経たないうちに兵士の足首まで埋まる事になります。そこで薬莢を蒸気機関車の缶入れ同様に回収箱に入れられるようにしたいのです」
拳銃の空薬莢ですら熱いのに対空砲の弾丸となるとその火薬の質もケタ違いに燃焼性が良くなるのだ。当然皮膚が変異し疵として残る可能性すらある。
「図面はひいてあります」
「そうか、じゃあ複数案を試してみよう」
別の将校が告げると技術将校は頭を深く下げた。

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