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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 8

一行が通された広場には鉄塔横に備え付けられた真っ白で長い砲弾……一番下には盃を引っ繰り返したようなモノがある。
「あれが噴射口そこから発するで燃焼瓦斯や煙だけでも火災にあった様な大やけどの恐れがあり、人員も命を落とします」
「なるほど」
担当技師士官が丁寧に説明する。
「しかしあんな軍事機密の塊を完全に破壊するには難しいだろう」
「米国も似た様なモノを開発している情報があります、ですが燃えカスで解析するには時間を要するとみてます」
「だろうな……空母もそうだが君はあの戦艦を見てどう思うかね?」
「大変面白いと思います……個人的な意見ですが墳進弾は半世紀後には当たり前になっていると思います」
戦艦の兵装すら変える可能性を持つ目の前に立つ兵器を見た上村はため息をついた。
「新しいモノを任される身は辛いがやりがいがある、先端には爆薬か」
「先端には誘導装置がありその後に爆薬です。ロケットは固形燃料方式、射程距離は100q以上……これは風向きや気象条件により多少のずれがあると思います。誘導装置を含めて今後の高性能化が課題です」
「縮小化も含めてかね」
「……元は対戦車弾として独逸からその概要が齎されたのを大型化したそうだね」
「はっ、下條少将の言うとおりであります」
そうか、陸軍は戦車で立ち遅れている分対戦車火器の開発の開発は急務だ。三国同盟が締結と同時に独逸のUボートが来日した事がある……その時に齎されたのが一つが墳進技術である。
「どうも陸の兵装には疎いもんで……これは失礼を」
「かまいません、これは今も極秘事項ですからね」
やがて実験準備が整ったのか技師達が待避壕と身を隠し見学者達も別の待避壕に張られた戦車のヘリスコーブを応用した窓からのぞきこむ。45度の角度に傾けられた鉄塔はカタパルトだ……カウントダウンが始まりゼロと同時に墳進弾は勢いよく発射する。上村も下條も双眼鏡で見上げたが噴煙で出来た雲しかなかった。
「標的艦に命中」
沖合にある標的艦を見た副長はゾッとした、沈んでいるのだ。
「無論防御兵装も研究対象になるか……独逸は元より亜米利加は投入してくる」
「はい」
「海軍司令部に話しかけてみよう、我が艦の目的は来るべき新兵器運用の為の受け皿になると」
「いいのですか?」
「西処女亜(ウェストバージニア)は改装が始まったばかりだ、他の艦長にも話してみよう」

戦艦に限らず兵器とは幾年も経てば旧式となるが戦艦なんかは改装できるように設計されている場合が多い、現に千歳型水上機母艦二隻は空母化を前提に建造されており今頃は佐世保と札幌ドックにて空母改修の真っ最中だ……世界初の空母である鳳翔は練習空母になっているが斜飛行甲版化改修、墳進推進航空機発着試験支援空母として近く配置転換される。

「右往左往も良いと事じゃな」
東京海軍省の総責任者は書斎にある山積みになった報告書に計画書を見る……片隅には予備役士官や婦人/少女士官らが作った夜食の皿も積み上げられている。予備役とは従来通り事情により前線に出られないか定年を迎えるも健康上問題ない士官らが引き続き務める制度だ……婦人/少女士官は今年から始まった制度で主に軍内部の事務や炊飯業務をする。軍隊は社会を濃縮したようなモノであるから女性でも適応出来るのである。
反対する意見も出たが人材発掘には苦心する現場、何かと反欧州列強感情があってか政変後に試験的に士官の家族を対象に募集をかけたらあっという間に集まり、横須賀を初めとする軍要衝各地に女性士官学校を設立する事になる……これには橘次官も笑うしかなく、自ら不眠不休状態で関係各位と調整に出たのである。今はコレも前線も落ち着いている……思ったよりも“巨人の足筋切断作戦”の事パナマ運河爆撃作戦の効果が大きい。太平洋に残された艦隊は三つ程度……今頃あちらも空母艦隊化を急いでいるだろう。パナマが爆撃できると言うのは米本土の空襲も可能になる事を示唆しており太平洋に面した州では戦々恐々になっている。

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