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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 80

「ホワイトハウスで何を言われたか知りませんが日本海軍の艦隊運用レベルはもはや我々と同格かそれ以上と思ってください」
艦長のジョニー.H.レイフマンは物分かりが悪い情報将校にそう告げるなり発令所を後にした。彼はオーストラリア派遣軍に従事しミットウェーでの敗退を実感した一人であり、暫くは第一パナマ運河要塞にある海軍研究所で閑職であった。そんな彼に原子力潜水艦の艦長に白羽の矢を立てたのは彼が米海軍随一の潜水艦艦長だからだ。彼は原子力に関しては何も知識が無いが動力源がロモアラモスから超軍事機密である事は確かだ。
「あいつも災難だな、コールマンも」
あの研究所が日本海軍の航空隊空爆で壊滅したらしい……しかも相当ヤバいらしく、研究所からの担当技師も何人か連絡がつかない。それでも運用に支障がないのは原子力研究所が何か所があるらしい、ため息をつきたくなるが今の米海軍はこんなもんである。
「艦長、ネモから通信です」
「何事だ?」
「敵哨戒機の爆雷を受けて前部居住区浸水、浸水阻止するも排水不可能」
「ここまで航続距離がある飛行艇があるからな、ネモの位置は」
発令所にて副長がその位置を示す、ギリギリ自軍の制海圏に入る。
「太平洋艦隊も動いているのでしょうか?」
「恐らくな……敵哨戒機は恐らく飛行艇だ」
「はい?」
「日本は地政学上、我々よりも飛行艇を重要視しその為の支援母艦も充実している。ロモアラモスの空爆時に双胴体の大型飛行艇が確認されてな……B−17よりも高く飛ぶらしい」
「では、なぜホワイトハウスを空爆しないのですか?」
「そこがヒトラーと違う所だ、寧ろヒトラーがそれをするから敢て手を出さない」
「我々と違うんですね」
「戦争とは所詮指導者の知恵比べだ、先代の大統領は圧倒的優位上に足元をすくわれたのさ」
ジョニーもこの戦争が終われば地元の州議会議員を務める伯父の後釜になると言われるほど政治に関しては鋭い視点を持つが本人は政治家になる事は嫌っていた。それは政治家の家族程寂しく、彼も“箔付け”の為に海軍士官学校に放り込まれた経緯がある。幸運な事に潜水艦乗務員は機密性が高く、更に潜水艦を専門に扱う技研所属な故に面倒なパーティーでも機密性を理由に断られるのでジョニーは案外気にいっていた。戦争になっても当初から楽観的な考え方をせずに前線で戦っている。
「ハワイ奪還はやるのですか?」
「しないな……そんな戦力を差し向けたらヒトラーが英国上陸よりもパナマ攻略に動く。ハワイに関しては日本軍に対する抵抗運動すら起きてない、これは日本が原住民に対して色々と支援しているからだ」
「!」
「利に適っているだろ、ある程度の損害は出るが弾圧による諸経費や将来的な事を考えると安く済む」
「艦長、情報部に異動しないか?」
「訳分からん原子力潜をほっておかれるか?」
情報部将校のジョークをサラッとかわして彼は言う。
「日没後に換気の為に水上航行に移る」
海流の関係上、予想以上に自国制海圏まで到達したノーチラスは夜間の水上航行に入っていた。傍にはネモが航行しており応急修理の為に乗務員が総出で作業をしている。
「味方艦のニュージャージです」
「ああ、オーストラリアで船体甲板後部を吹き飛ばした戦艦か……空母になったんじゃないのか」
「戦艦空母ですよ……最も使い方に苦慮していますが」
副長と航海長のやり取りを聞いてジョニーは支給品の煙草を銜えていた。
「警戒は怠るなよ、日本海軍の飛行艇はその気なれば世界一周も出来るぞ」
実際ダッチハーバーには強行偵察で日本海軍の大型飛行艇が襲来、情けない事に未だに撃墜した事もない。
一方、天照に合流した八八艦隊はそのまま随伴し日本へと目指す。
「原潜の可能性は高い」
「うむ、あの国の事だ。ロモアラモスの様な原子力関連の研究所は複数あるかもしれんな」
織田と伊賀は天照の司令官室にて談笑していた。
「一応、葵川には司令部を通して警戒する様に電報を送信している」
「仕事が早いですな」
「ヒトラーが海軍音痴でもUボートに関しては熱心だ、原子力Uボートの可能性も捨てきれない」
「亀天号やノーチラス号の様な潜水艦が出て来たかもしれませんな。全く、亜米利加もこんな事に浪費するならヒトラーの方に差し向ければよいモノを」
伊賀はあっけらかんと言う。
「布哇での交渉も亜米利加が折れるのは時間の問題だ」
「講和に応じますかな」
「応じるしかあるまい、太平洋戦線の兵力を遊ばしているのなら欧州に差し向けるべきだと移民系議員らが反発している」
織田もこうしてくれると武蔵と信濃の負担が減るので助かるのだが……そう簡単にはいかない。

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