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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 76

井伊はその事をよく知っており最後の仕事は生き残って葵川と合流する事……葵川は生き残る事が大事と説いていた。例え敗戦になってもそれは復興と言う名の作戦行動が待っているからだ。
「英国海軍の巡洋艦です」
「助かったな」
「独逸軍機引き揚げていきます」
巡洋艦の艦橋にあった双眼鏡を覗く井伊は言う。
「来たか」
ドーバー海峡に面した丘陵地帯に大音響が響き空気を切り裂く音がドーバーの海上を奏でる。
「恐らく連中は動く標的を撃つのは初めてだ、独逸陸軍が艦艇攻撃用鉄甲弾を持っていると思うか?」
「持ちませんな、最も我が国の陸軍なら間違いなく分捕っても用意するでしょう」
更に艦艇の攻撃で一発で仕留められるのは戦艦の砲撃手でも奇跡に近く、英国ではゴルフのホールインワンに例えられる。通常弾頭しかないのは単に都市部を破壊するには十分だからだ。
「連絡入れたな?」
「はい!」
さあ主役の登場だ……“池田屋階段落ち代役作戦”と後世に語り継がれるトールマンハンマー要塞攻略戦のシメを飾るのは飛鳥とプリンスオフウェールスである。
「トールマンハンマーは今現在も射撃を続けてます」
「そうだろうな」
飛鳥の艦橋にて葵川は神妙な表情になる。これだけ砲撃をすれば周囲が熱くなるのだ。
「艦首墳進砲全弾発射、敵目標、トールマンハンマー各砲座」
プリンスオフウェールスも飛鳥と併走する航路を取り艦首ミサイルサイロを解放した。
「発射!」
「ファイヤ!」
イ号墳進弾を更に発展小型化したのがハ号墳進誘導弾/H型対艦ミサイルであり極光艦隊で初めて使用された。
「次弾発射準備急げ」
艦橋に響く声に葵川は云う。
「ハ号墳進誘導弾はどうしても砲弾発射の熱源が必要だったからな」
ジェットエンジンを使用し誘導は事前に設定されたコースをジャイロで行うが敵目標付近では赤外線に切り替わる、その為にも絶対に食いつく囮が必要だったのはこのためである。そして弾頭はロ号弾頭であり、各陣地を瞬時にして灼熱と爆風が襲い人が生きたまま焼かれ列車胞は修理が不可能になる程の損害を受け、爆風は開いたままの火薬庫へと流れ込み中央砲弾陣地は火山噴火宛らの大爆発する。後に起こる第三次世界大戦時にその跡を見た連合軍士官は地形が変わっていたと絶句したと言う。
炎は三日三晩燃え続け、付近に居たナチス独逸第三帝国陸軍士官らは生存者の救出するしかなく要塞への補給を司る鉄道輸送隊の詰め所が臨時の指令室にして輸送大隊を指揮していた将校は焼跡を見て言葉を失う。判別がつかない遺体、爆風と熱風でひんまがっている列車胞の砲座基部は黒こげになって転がっていた……レールは全て不規則に曲がり気化弾頭の怖さを知る事になる。



「司令官、プリンスオフウェールスの艦長からの通信です」
葵川は受話器を取り話し始めると彼は戸惑った。イングランド連邦現女王陛下マーガレット一世が直々にガーター勲章を授与したいと言う話である。葵川は性格上あんまりこの手の事は避けたかった、こんなモノがあれば退職後に政界に担ぎ出される事になりかねない。何よりも礼装は肩が凝るが辞退する訳にもいかない訳である。
「司令官、おめでとうございます」
「はぁ、広報官に言っておけ、あんまり大げさに報道しないでくれと」
「それは少し無理では?」
部下達は苦笑するが葵川は受話器を置いて云う。
「どうも慰問を兼ねて各艦の見学をする事になったからな、あちらさんのご要望で……」
その瞬間艦隊の全艦は手が開いた乗務員は大掃除を進める事になったのである、この艦隊にはまだ日本帝国の皇族ですらご乗船した事が無いので正しく大騒動だ。
「礼儀作法は確認しておけよ」
「了解です」


後日、洲子都蘭土(スコットランド)にある須架派府ロ(スカパフロー)泊地にて飛鳥は接岸し目の前で艦橋要員は礼装に着替えて整列、赤絨毯の先に品がある乗用車が止まり、後部ドアを従者が開け頭部のティアラと着用している礼装コートが如何に調和しているのか素人にもわかる、彼女こそマーガレット一世である。
「閣下のキョクコウ艦隊の働きによりドイツからの長距離砲撃攻撃が止み国民は感謝してます。この勲章は我が英国国民全ての感謝のしるしと思ってください」
部下の一人から勲章が入った箱から勲章を出す。
「この葵川、そのお言葉だけでも報われた思いです」
葵川は片膝を地面に着く形しゃがみ、マーガレット一世自ら勲章を礼装に付ける。
「お似合いです」
「恐縮です」
その席上には合流した井伊達も姿を見せており静かにその光景を見守っていた。会食の後に葵川がエスコートして極光艦隊各艦への慰問へと移る。内火艇にてマーガレット一世は葵川に尋ねた。
「葵川司令官は大学で心理学を学ばれたと聞いてますが」
「はい、戦争は勝敗に関係なく当事国の国民全員の心に深い傷を与えます。今の情勢も……第一次世界大戦が遠因と思ってます」
「あの戦争は若者世代が全滅しました、悲しい事です」
「申し訳ありません」
「いいえ、事実です……この戦争の戦後欧州はどうなるのかも分かりません、もっと酷い事になるかも知れないのです。万が一の場合は国を出る事になるでしょう」
「マーガレット一世女王陛下、そんな事はさせません……何時かヒトラーを法の捌きを受けさせるべくこの艦隊が飛鳥のみになっても闘います、この勲章は誓いの印です」

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