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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 75

それが井伊善次郎大佐である。彼は独逸要塞トールマンハンマー攻略戦の重要なポジションにいるのだ。
「まもなく独逸陸軍の列車胞射程距離内に入る、各員は最終準備にかかり速やかに退去……英国へと向かう」
「はい」
太秦はこの為にここまで持ってきたのだ、欺瞞情報や護衛を考えるとその労働力は何事も代えがたい。既に太秦には妨害電波を出しているので逆探知されるのも時間の問題だ。
「各対空機関砲、副砲自動給弾装置準備完了」
「対空測距離電探捜査連動」
「独逸空軍機多数、海軍機も見えます!」
「総員退艦、訓練通りに装甲高速艇に乗船!」
艦尾から海洋迷彩を施した装甲高速艇が飛びだす。
「総員退艦確認」
下士官を束ねる担当士官が井伊に告げると彼は言う。
「自動航法装置作動」
「作動確認」
彼は二度と見る事はない太秦の艦橋を見る、木地がむき出しの映画のセットにもならないもんだがここまで来ると愛着が来る。
「太秦よ、最後の晴れ舞台だ!」
井伊以下全員が敬礼し装甲高速艇がある艦尾内側ドックへと急ぐ。艦内では対空砲の銃声音が鳴り響く。
「思ったよりも早いな」
「急げ、全速力だ」
「各員、対戦車墳進短砲を持て」
対戦車墳進短砲は後世日本陸軍が三国同盟時代の際に空母赤城型設計図と交換して独逸から手に入れた品物であり、戦車開発が遅れていた日本にとって将来的にナチス独逸第三帝国陸軍の戦車軍団と闘う為に開発が進められていた。井伊は大学時代の同郷に工学科に進んだ秀才と知り合いになり卒業後は陸軍に入隊、葵川を通じて用意出来る個数の対戦車墳進短筒砲を搭載していたのだ。これで航空機を落とそうとするとは想定外で陸軍も唖然としたが低空飛行攻撃するのなら有効になる。
「艦長、本当にするのですか?」
「やるしかないだろ……砲術長、戦車よりも装甲が薄い航空機なら当たれば木端微塵に出来る訳だ」
無論機関銃やら搭載しているが当たり所がエンジンか主翼フラップでないと撃墜出来ない事は知っている。そこで副砲並に強力な火器を探していた井伊がこれを思い出して統合幕僚本部に居る陸軍技術将校に持ちかけた。
「戦車と違い速いですよ?」
「やってみる価値はあるさ、こいつが航空機にも有効なら戦闘は変わるぞ」
案の定、低空飛行に移り機銃を掃射しつつも接近する独逸軍機。井伊はニヤリとして引き金を引くと噴煙を出しつつも対戦車短距離弾は敵機の至近距離で作動して木端微塵にしたのだ。
「近接信管にしておいて正解だな」
短筒を船内に居る部下に手渡すと砲術長も続けていた別の敵機が慌てて急上昇した所に短筒を向けてトリガーを引いた。
「やりましたな!」
「下士官らも応戦してます、英国のミーティアも……」
「航続がギリギリなのに、無茶しやがって」
井伊は英国紳士らの魂に敬意を表した。ジェット戦闘機でも現時点ではプロペラ機の方が強かったのだ。
ミーティアは英国北部で研究が進められ米国の支援により試作量産機が飛んでいた。日本でも生産する計画は彼も知っている……とは言え今は英国領土まで突っ走るしかない。
「太秦の対空火器沈黙」
「そうか……いよいよだな」
ここでグラーフツェッペリンを初めとする艦載急降下爆撃機隊が襲いかかる、遠目でも分かるが爆弾は太秦の甲板を突き抜けても艦内にある衝撃を吸収する発砲剤が充填した水槽に次々と放り込まれているのに過ぎない。これで海軍も空軍も陸軍の列車胞に頼まざる得ない。独裁国家は失敗は死に繋がる。井伊はニヤリとする。

仏蘭西北部アルトワ丘陵……元は仏蘭西軍が第一次世界大戦後にマジノ線と共に構築した要塞工廠があったが電撃戦によりその要塞はナチス独逸第三帝国軍が更に手を加え10か所の砲台陣地と中央砲台兼指揮所は十キロにも及ぶトンネルで結ばれている。
28サンチゲルマン砲は列車胞である……列車胞の利点は線路をセットし蒸気機関車さえあれば何処でも砲撃出来る。ゲルマン砲の恐ろしさは戦艦の副砲が線路さえあればどこでも移動出来る用に設計されている。これが各砲台陣地に五門配備、ここからの攻撃により現時点で英国本土の沿岸部各都市の六割を破壊していた。最も中央陣地にはヒトラー砲と呼ばれる列車胞もある。無論レジスタンスや英国、米国も破壊工作を試みるも広過ぎてとても致命傷を与えられない。爆撃も天然の地下要塞により指して効果が無い。日本軍も当初はロ号弾頭による爆撃も検討したが失敗する、葵川はこの要塞攻略には如何に列車胞を引きずり出す状況に持っていくか……彼は東京に学生時代から住んでいる下宿があり、後に葵川戦場心理研究会の礎になる部屋にはびっしりと壁一面に状況が羅列され、横線で消したりする個所があった。橘が初めてここを訪れた時は唖然とした程である。結果として囮による列車胞を引きずりだすにはそれ相応の下準備を要した。印度洋でのUボート大量拿捕も徴発させる目的があった。

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